2024.12.17 平均賃金ってなに?どう計算するの?

社長「この日だけ従業員の人にやってもらう仕事がないなあ。よし!従業員全員この日は休みだ!」

従業員「わかりました!でも、その日は会社の都合でお休みになるわけだから、平均賃金の6割以上の休業手当がもらえるんですよね?」

社長「も、もちろんだよ。(平均賃金ってなに?6割?休業手当?)」

 

こんな経験はないでしょうか。

労基法の中には度々、「平均賃金」という言葉が登場します。

皆さんは、この平均賃金の算出方法について、しっかり理解できているでしょうか。

 

今日はそんな平均賃金のお話です。

 

平均賃金とは

そもそも平均賃金というのは、手当や補償を行う際の基準になるものとして、労基法に定められています。

1日に給与を2万円もらう人と1万円もらう人では、同じ1日を補償するにも金額が変わって当然です。そのため、平均賃金はそれぞれ個人毎に異なる金額になります。

労基法で平均賃金の考え方が登場してくるのは、主に下記のような場合です。

・休業手当

・解雇予告手当

・災害補償

・減給の制裁

 

今回はその中でも特に発生頻度が高い「休業手当」を例に、平均賃金をご説明させていただきます。

 

休業手当

本題の「平均賃金」から少し話がそれますが、労基法では「休業手当」という手当の支給義務が定められています。

コロナ禍の雇用調整助成金申請でこの言葉を知った方も多いのではないでしょうか。

休業手当というのは、所定労働日に従業員側が働く気でいたにも関わらず、会社の都合(仕事が無い、他の従業員が手配できず店舗を営業できない等)でその従業員をお休みさせる場合に、従業員に対して支払わなければならない手当です。

この休業手当として最低限支払わなければならない金額が、平均賃金の6割とされています。

 

平均賃金の計算は?

ではその平均賃金の算出方法ですが、月給制の場合の計算式は下記のとおりです。

 

・算定事由発生日以前3か月間に支払われた賃金総額÷算定事由発生日以前3か月間の総日数

 

これを具体例に当てはめて計算してみます。

 

給与計算が末締め翌月25日払いの会社で、従業員Aさんを12月に所定労働日の内1日だけ休業させたとします。

この場合、平均賃金算出のために9月、10月、11月の期間に対応する賃金(10月支給、11月支給、12月支給)を使用します。

 

Aさんの10月支給、11月支給、12月支給給与が次の通りだとします。

 

10月支給:302,155円

11月支給:285,760円

12月支給:312,983円

 

平均賃金算出のためにはまず、上記3期間の賃金を合計します。

302,155円+285,760円+312,983円=900,898円(←これが算定事由発生日以前3か月間に支払われた賃金総額)

 

その後、出てきた金額を下記のように3期間の暦日で割ります。

 

10月支給: 9月1日~9月30日→30日

11月支給: 10月1日~10月31日→31日

12月支給: 11月1日~11月30日→30日

暦日合計:91日(←これが算定事由発生日以前3か月間の総日数)

 

900,898円÷91日=9,899円97銭

これが、Aさんの平均賃金1日の額です。

なお、平均賃金の端数については、銭未満を切り捨てるように行政通達で示されています。

 

平均賃金を出すことが目的であれば、ここで計算は終了です。

 

ただ、今回の例は休業手当を算出するのが最終目標なので、この平均賃金の6割を算出する必要があります。

 

休業手当=9,899円97銭×1日(休業日数)×60%≒5,940円(ここでは円未満四捨五入)

 

ここまでやってゴールです。

 

 

このように、平均賃金はざっくりとした平均ではなく、しっかりとルールがあるのです。

 

ここまでの説明で基本は網羅できていますが、下記のようなケースでは計算方法も変わってきます。

 

・日給制度、時給制、歩合制又は月給とこれらが混ざった支給形態の人の平均賃金を算出する場合

・直近3か月の給与計算期間に産前産後・育児休業、労災による休職期間がある場合

・入社間もなく、直近3か月の内、在籍していない期間がある場合

等々

 

計算式に「算定事由発生日」とありますが、「そもそもそれっていつなの??」

 

等の疑問も出てきているかもしれません。

 

平均賃金のルールはとても細かく、事案ごとの適切な計算方法が、調べてもなかなか分かりにくいかもしれません。

平均賃金の計算でお困りの際には、ぜひ第一コンサルティングまでご相談ください。