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第一経理ニュース

我が社の原点

業種転換を決断 ~会社をつくるのは従業員、環境をつくるのが経営者~

 

 

 

 

 

 株式会社 日商サカエ    
代表取締役 菅野 利男 (かんの としお)氏

 都内及び埼玉でお弁当屋を9店舗経営していたが、数々の競争相手の出現により売上は7割減に。新たな一手として冷凍食品をメインとした「業務スーパー」というフランチャイズ店への加盟による業種転換を決意。それから8年、第1号店の川口芝店は順調に成長し、昨年6月に2号店として川口駅前店をオープンさせた。
 今回の「我が社の原点」では、株式会社日商サカエの菅野利男社長に当時の決意の背景、現在までのご苦労などを川口駅前店でお聞きしました。

  

◆ 数々の競争相手

―― お弁当屋さんから「業務スーパー」に転換させようと決意された頃の時代背景をお聞きしてよろしいですか。

社長 : お弁当屋さんを30年経営してきました。しかし、時代の流れとともに競争相手がどんどん出てきました。
 最初はコンビニです。コンビニがお弁当に力を入れ、次に一般のスーパーがお惣菜、お弁当のコーナーを充実させてきました。
 
 また都心では、2002年、旧国鉄跡地の汐留に新しいビルが次々と建って、神田、飯田橋等のオフィスがそちらに移転しました。その影響で、裏通りの居酒屋さんから喫茶店まで、お昼にお弁当を売るようになった。この新たな競争相手の出現でお弁当の売上が7割減になってしまいました。年計表を見て、5年後にはもう駄目だなと感じました。

 

◆ 業務スーパーへ転換

――「業務スーパー」と出会ったきっかけはなんですか。

 社長 : お弁当屋さんの食材を少しでも安く仕入れようと考えていた時、「業務スーパー」の関東第一号店である大宮店がオープンし、ダイレクトメールがうちにも届きました。買いに行ってみると、非常に安いわけです。いろいろなものを買って、使えるかどうか試してみたら、そんなに悪くない。一週間に2回は行きました。
 
 「業務スーパー」本部がチェーン店を募集していたので、大宮店の店長に会い、チェーン店って儲かるかと聞いてみました。すると儲かるという。そこから興味を持ちました。チェーン店に加盟したいというと、本部は関東への進出を強化したいので、すぐに飛んで来たのです。

 説明を聞いて初めてわかったのですが、日本のスーパーは粗利が25%ないとやっていけないそうです。アメリカは15%でいい。「うちはアメリカをめざしている」と言います。粗利を低くしているから売れるのだと。実際10%も安ければ売れますよ。

 大宮店の店長にさらに詳しく話を聞き、しばらく検討しました。そしてこれはほんとうにやっていけると思いました。

 
――検討してみて、スーパーに転換しようと決心するまで、どれくらい時間がかかりましたか。

 社長 : そんなにかかっていません。2ヶ月か3ヶ月です。中小企業家同友会で「自分の業種が悪い時は業種を変える」という講演がありました。事業領域を変える。スーパーに領域を変えたらやっていけるのかどうか考えました。

 まず、経営が成り立つかどうか、人使いや先々のことなどいくつかの項目を掲げてみました。

 たとえば、「業務スーパー」の先行きはどうなのか。収益はあるのか。われわれ素人がパートを募集してやれるか。資金面ではどうなのか。これらの課題を掲げて、一つずつクリアしていき、「よし、出来るぞ」と判断しました。

 また、チェーン店に加盟する時、同じ経営者が何店舗経営をしているかということも重要です。1店舗や2店舗しかやっていないというのはチェーン店を増やせない。つまり収益が悪いということです。ところが、「業務スーパー」では20数店舗経営している経営者が何人もいました。

 先ほどお弁当屋が厳しくなったという話をしましたが、うまくいっているところもある。この周辺ではニコマル弁当が売れています。

 そういう経営者もたくさんいるのです。そういう経営者と競争しても私の能力では負けてしまう。考えた結果がチェーン店に加盟することでした。

 

◆ 売上予測を下回る

―― スーパーに転換して、どのようなことに苦労されましたか。

 社長 : 売上の予測があるのですが、オープンした当初はそのはるか下でした。本部はそのうち上がるからというのです。どこの店も最初はそうだと。チェーン店として違反になるのは他社から食材を仕入れること、価格を勝手に上げることです。お客さんにお店を知って頂くためにチラシをまくなど、販売促進は積極的にやったほうが良いと思いました。

―― 実際にそれはやられたのですか。

 社長 : はい。チラシやダイレクトメールを持って、先ず自分達みんなで飲食店を毎日20軒まわりました。地域を決めて、介護施設、保育所、食べ物屋さんなどにも配りました。そうするうちに、徐々にですが売上が上がってきた。ちょうど6カ月ぐらいで採算ラインに乗りました。1年程で、収益が出るようになりました。1年すぎたら、これはいけると、もう安心しました。


 
◆ パートさんの動向が一番の指標

―― パートさんが商品を買って帰ってくれるそうですね。 

社長 : パートさんが言いますよ。やはり安い。価格、味など総合的に考えて「業務スーパー」が一番良いと。ほんとうに安くておいしいかどうか、僕が見ているのは、お店で働いている人が買ってくれるかどうかなのです。お弁当屋さんでも、おいしいおいしいといっても、そこで自分達がつくったものを買っていくかどうかです。美味しければ買うし、不味ければ買わない。売れるかどうかということが実際に見えてきます。パートさんはお休みの日でも買いに来てくれていますよ。



 ◆ 仕入の難しさを知る

 ――その他、意外に苦労したということはありましたか。

 社長 : 仕入です。技術的、経験的なものが足りず、仕入を切らしてしまうのです。

 たとえば、暑い日はアイスクリームや水が売れ出すでしょ。売れると分かっていても予想以上に売れてしまう。その辺の感覚がわからない。多少は商品があるけど、多少ではすまない。倍も出るから。

 あるいは、お水など、時々どさっと大量に買って行かれるお客さんがいる。そういうことに対応するにはどうするか。それとは逆に、賞味期限との関係で商品が残ってしまう問題もある。仕入の難しさをそこで感じました。「業務スーパー」の加盟店としてわれわれが出来ることは販売だけなのです。

 欠品しないためにはどうするかということをみんなで相談し、議論をしました。例えば季節を読む、経験を積むなど、どんなことでも項目に出してマニュアルをつくりました。

 現在、経験のある芝店ではほぼ克服できていますが、駅前店はまだ欠品が起きますね。


 
◆ 声出しリーダー

―― スーパーとして商売を行うにあたって、重要なことは何ですか。

 社長 : 第一は仕入、第二に接客、つまり元気のいい店かどうか、第三に店頭への品出し、これは売り方見せ方で、どこに何を並べたら売れるか、大きく言えばこの三つですね。こっちの駅前店は芝店に比べ、まだまだ元気がないですね。

 そこで駅前店をオープンした頃、一人ひとりを、芝店に一日研修させました。元気良くしようということで、「今日は○○さんの日!」として、率先して「いらっしゃいませ!」というリーダーを決めるのです。今日はあなたが声出しリーダーだと決めて順番にやる。実際声出しリーダーになると声が出るんです。スーパーで働いていた経験者は一人ぐらいしかいないから、そういう点ではたくさん学ばなければいけませんね。


 
◆ お友達作戦

社長 :  駅前店では、基本的にお客さんと従業員という関係ではなく、お客さんとお友達になろう、という「お友達作戦」をやっています。芝店のときからお客さんとコミュニケーションを取ろうというのはありましたが、もう少し切り口を変えて、「お友達になりましょう」ということなのです。どんなことからでもつながりをもつためにお客さんと話をする。

 たとえば大量に漬物を買ったお客さんには「どういう職業ですか?」とか。「居酒屋」と答えてくれたら「今度飲みに行きたいですね」と言う。どこのスーパーでも、「いらっしゃいませ」、「ありがとうございます、またお越しください」という言葉だけなのです。心に響いてこない。それでほんとうにいいのかどうか。それを越えられないか、ということですね。


 
◆ 真のお客さんは誰なのだ

 社長 :  「真のお客さんは誰なのだ」というテーマが私の中にあります。真のお客さんというのは、毎日考えても、この人が真のお客さんというのは見えてこないのです。買いに来てくれればみんな真のお客さんだと考えたり、でも買いに来てくれるお客さんの中にも真のお客さんがいらっしゃるのかと。

 私は真のお客さんというのは、自分達がつくるものだと思っています。それは自分達が明るく楽しく働くことによって、お客さんがそのお店の雰囲気を感じてくれる。だから楽しい職場づくりにものすごく力を入れています。

 楽しい職場づくりとはいったい何なのか。お互いに働く中で、お互いの人格を認め合える。具体的にいうと仲間はずれにしないとか、いやがらせをしないとか、無視しないとか、そういうことが楽しく働く職場になってくるのです。上っ面だけでは駄目。

 そこで楽しく働くために、こういうことはやってはいけない、こういうことはしましょう、というものを作ったのです。

「楽しく働く十か条」、「仕入を切らさない十か条」。たくさん十か条があるんですよ。ほんとうに楽しく働ければ、お客さんはその店員さんに付きます。この人にはこのお客さん、この人にはこのお客さんと。人間って必ず好き嫌いがあるから。それを経営者は総合的にみてあげることが大事です。

 

◆ 会社は従業員がつくる

社長 :  会社の発展は従業員がつくる。従業員が売上を伸ばしている。トップが業績を伸ばすのではない。一人ひとりの従業員が伸ばすのです。そこの力があるかないかだけです。ある程度大きくなれば、従業員がやってくれる。経営者として私の仕事は、働きやすい環境をつくっていくことです。    

 目指すところは一人ひとりがその気になって働くことによって売上を伸ばしていく。収益を上げて行く。そう思いますね。

 お店で一番きつい仕事は、重いものを運ぶことです。漬物でも塩でも重い。そのきつい中で女性の人でもやれるように、手前の陳列棚の板に車がついています。載せてすぐに出せるようにしています。もっとそういうものを研究して、働きやすい職場作りをしていきたいと思います。

◆ これからの経営の夢

―― これから目指すことをお聞かせいただきますか。


社長 :  期待を超えるサービスの向上を目指して、「ここに業務スーパーがあって本当によかった」と感じて頂きたいです。震災時には米、水その他たくさん不便をかけましたが、それでも「業務スーパー」は商品があると喜ばれました。「あてにされる店」を目指したいです。  

当社で働く人すべてが真に喜びを感じながら働いてもらうためにも、もっともっと勉強していきたいと思います。

 
――本日はどうもありがとうございました。

 (文責 池田 健一)