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第一経理ニュース

随想 No.37

軍事より法事 (司法改革をめぐる議論)

  

 パートナーズ法律事務所 弁護士 原 和良

  1.  司法改革の中で、ここ数年司法試験合格者が激増し、世の中の経済不況も重なり法律事務所も弁護士も、経済的にかなり疲弊している状況にある。
     日弁連をはじめ多くの弁護士は、急激な弁護士増員のため、既存の弁護士の窮乏化、若手弁護士の就職難(日弁連の調査によると昨年12月に登録予定の弁護士の就職内定率は昨年11月段階で65%)、就職難を理由としたロースクール受験者数の激減、という事態を受けて、合格者数を大幅に抑制することを求めている(政府目標の3000人を1000人~1500人へ減らす)。

  2.  先日、増員賛成論者である浜辺陽一郎弁護士(青山大学法科大学院教授)の「弁護士が多いと何がよいか」(東洋経済新報社)の本が出版された。
     私自身は、現状の基盤整備なし(民事扶助制度の拡充や弁護士の活動の場の整備、裁判官や検察官の増員を含めた裁判制度の整備・充実など)の弱肉強食的な弁護士増員には反対であるが、今の弁護士数が足りているとは思わない。
     浜辺氏は、著書の中で、法的レベルが低い国は衰退する、弁護士がクレーマーやモンスターを許す社会を変える、アメリカやイギリス、中国は国際競争力を維持するため法曹養成を国家戦略と位置づけているためセクハラ訴訟やカルテル違反で足をすくわれる日本企業とは格段の差がある、お役所の杓子定規な仕事も弁護士が関与することにより活性化する、というものだ。やや理想主義の感があるが、歯切れのよい大変興味深い立論である(最近のオリンパスや大王製紙の不祥事を見るにつけて企業の無法ぶりにはうんざりさせられる)。

  3.  これからは、軍事・戦争の時代ではない、法的な根拠や基準、見通しをもって交渉力で紛争の平和的解決を目指す時代。そのためには、国家レベルでも企業レベルでも個人レベルでも、多角的な角度からメリット、デメリットを検討し、紛争を回避するための客観的基準を指し示し、解決を導く交渉力を持った法曹を要請することは国家的課題であることは全く同感だ。弁護士も裁判手続だけではなく、紛争の予防や交渉解決の場で活用できれば、極めて生産的な活動ができることになる。
     私流に言えば「軍事より法事」。法事国家日本になることは9条を持つ国のアイデンティティであり日本再生の大きな戦略的な課題であろう。

  4.  こう考えると、三権の一つである日本の司法予算が国家予算の0.4%としかないことは、大変お粗末なことである。原発被害賠償も政府がもっと思い切った弁護士の活用を考えないと、何年経っても被害賠償は終わらないであろう。一部の献身的な弁護士の孤戦奮闘は痛々しいくらいに感じるほどで、社会全体で復興のための司法予算を検討すべきではないかと常々思う。
     一方で昨年から、司法修習生の給与支給が廃止され、貸与制となった。司法試験に合格しても、先が見えないから一般企業に就職した、地方公務員や裁判官職員となった、という話もちらほら聞く。
     交渉力を身につけた弁護士が、たくさん輩出されることは、市民にとってもまた、中小企業・自営業者にとっても大変ありがたいことなのだが、この国は何をやるにも戦略というものが見えない。国家も日本社会も過渡期だと思うこのごろであるが、一番問われているのは過渡期を一人一人の個人がどう生き抜くかのような気がする。

    あなたはどう生きますか?