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第一経理ニュース

随想 No.41

弱者と強者

 

弁護士法人パートナーズ法律事務所
弁護士 原 和良

 

1 世の中、新自由主義・弱肉強食・自己責任・競争社会が「今のトレンド」のように意図的にもてはやされている。このような潮流が一般受けするのは、おそらく、自分に余裕がないから、他人を蹴落とすことで少しでも自己防衛したいという心理状況が蔓延しているからであろう。

 

2 しかし、冷静に考えた場合、そもそも自分は強者なのか、勝ち組なのか?自分を振り返ったとき、決して勝ち組とは言い切れない。一見、勝ち組に見えてもそんなのは、人生のほんの一コマであり、そんな瞬間があると言うだけの話である。他人と比較して、自分より劣ったところを見つけて、優越感に浸るのは自分の努力は何も必要とされないから単なる気休めでしかない。

 僕らが青年期を過ごした70~80年代は、高度経済成長からバブルの時期である。学歴社会がもてはやされ、いい大学に進学し、いい会社に就職することが、人生の勝ち組としての方程式であった。しかし、誰もが疑わなかったその方程式は今では通用しない。いい大学を出ても、人間力がないとグローバル化した現代社会は生きていけない。

 

3 どこの会社にも、どこの組織にも、多数派・支配する側から見ると、「使えない」、「劣った」と評価される人材はいる。しかし、劣ったという評価は、ある特定の価値観からくる人間評価の一面にしか過ぎない。すべての人材が「優秀」な組織など存在しない。だとすれば「使えない」、「劣った」かのように見える逸材にどう輝いてもらうか、が重要なのであって、この課題は、すべての企業、組織のリーダーが永遠に悩む課題である。

 

4 人権の出発点はその人の存在をありのままに肯定することから始まる(日本国憲法13条)。ダイバーシティ(異文化を背景にした多様な人材の採用)や障がい者雇用、格差社会の解消、途上国の人権問題など、それは人間観の深さが問われる問題であり、世の中にはどこから手をつければよいのかわからない課題が山積する。

 最近電車で読んだデール・カーネギーの本「How to Enjoy Your Life and Your Job」にあった感動する話。ポール・ハーヴィーのラジオ番組(ザ レスト オブ ザ ストーリー)で紹介された実話である。デトロイトのとある小学校の女性教師は、授業中に、モーリスという盲目の生徒に、クラスで行方不明になったペットのハツカネヅミを探して欲しいとお願いした。彼女は、生まれつき視力を失ったモーリス少年に、神様が、ずば抜けた聴力を与えたことを知っていたからだ。今まで、盲目であることに劣等感を持ち、生まれてきたことすら恨んでいたモーリス少年は、生まれて初めて他人に自分の存在を評価されたことに感激する。後生、これが少年の人生の転機になった、と語っている。

 そう、もうおわかりの通り、モーリス少年とは、後のスティーヴィー・ワンダーのことである。

 

5 他人のあらを探すのは、簡単である。他人を見て、自分より劣っていることを発見し、それで満足することは、自分の成長を自分で放棄することだ。

 人生に勝者も敗者もない。与えられた自分の能力を最大限に生かし、自分がやれることに無心に取り組むことに集中しよう。