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随想

民法改正  ~国の将来を左右する重要問題~

 

 

弁護士法人 パートナーズ法律事務所 
弁護士 原 和良 


1  安倍自民党政権の復活で、にわかに憲法の改正がマスコミを賑わせている。憲法と同時に、目が離せないのが、100年ぶりの大改正といわれる民法改正問題である。
 補則含めてもわずか103条しかない憲法については、読んだことがあるという人も多いだろう。他方で、1044条と膨大な条文数になる民法は大変難解であり、通読したことがある人は少ないであろう。

 

2  明治維新以来、政府の悲願は不平等条約の改正であったが、そのためには、近代国家にふさわしい取引ルール(民法)の制定は急務であった。フランスから招聘されたボアソナードという学者が、日本人の研究者と一緒にフランス法を基にした民法草案を策定したのが1890年。帝国議会で制定公布されるが大反対にあい施行できなかった。1896年、ドイツ民法を参考にした改正を経てやっとのことで施行にこぎつけたという歴史がある。

 

3  当時は、日本には、「主権」「人権」「権利」「義務」「社会」「個人」などの言葉は概念として存在しておらず、民法はじめ近代法の制定過程で、西欧の法律概念の日本語訳として「発明」されたのがこれらの言葉である。「民法出でて忠孝滅ぶ」(穂積八束東大教授)~自由・平等の理念のもとにつくられた家族法は、家と家長を重んじる日本の風土に合わないということで、猛反発を受けた話は有名である。
 自民党の日本国憲法改憲草案Q&Aでは、「人権規定も、我が国の歴史、文化、伝統を踏まえたものであることが必要であると考えます。現行憲法の中には、西欧の天賦人権説に基づいて規定されていると思われるものが散見される…」との解説があるが、もともと為政者にとって人権の考え方がなかった国に輸入されたのが人権であり、伝統も歴史もないのである。
 昨今の憲法整論議の中で強く感じるのは、主権・人権・社会・個人という議論の出発点とも言うべき共通のプラットホームが権力者はもちろん、国民の中にも熟成されておらず、イメージだけが優先されて「世論」がつくられていく「危うさ」である。

 

4  中小企業にとって、民法の改正は、二つの意味で大きな影響がある。一つは国内取引のルールを明確に定めるという点であるが、改正に当たっては、形式的平等が貫徹されることにより大企業と中小零細企業、あるいは個人消費者の格差が固定化されることのないよう配慮と工夫が求められている。その中でも今日一番ホットな話題は、個人保証の制限の問題である。中小企業に対する金融機関融資には、必ず社長の個人保証が要求され、場合によっては配偶者や後継者の個人保証も要求される。これが、企業倒産時の再生を妨げ、事業承継を困難にしている。事業が失敗しても生活できるルールと再チャレンジできるルールづくりは我が国経済にとって重要な課題である。
 もう一つ、日本の民法改正は、国際化する取引の中で国際水準に見合うルールを作るという点でも重要であり、日本の契約ルールが世界に通用しないことの国家的、社会的損失は莫大なものと指摘されている。
 あうんの呼吸では国際取引・国際交渉は成立しない。

 

5  ともあれ、日本人は、時代軸と世界軸をしっかり見据えた改正論議へのコミットをしなければならない。