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第一経理ニュース

我が社の原点

人材が肝。

 

 

 

 

 

株式会社 ジンクル

代表取締役 小林宏明 氏

 

 ラーメン店5店舗を展開されていた2003年に第一経理ニュースの取材に応じていただいた株式会社ジンクル小林社長。現在はラーメン店、鉄板焼き店、イタリアンレストランの3つの業態、15店舗を展開しています。
 社名「ジンクル」の由来は、「人(jin)が起こすミラクル(mira-cle)を信じる」。他社にはない人材育成に対する取り組みをしている小林社長に10年ぶりにお話を伺いました。

 

聞き手 : 池袋本店第一 加藤 泰弘

 

業態多様化は会社を強くする

 

―この度は「ラーメンのまめぞう 浦和店」の開店(平成25年5月25日 埼玉県さいたま市緑区)おめでとうございます!
 現在、ラーメン店、鉄板焼き店、イタリアンレストランの3つの業態を運営されていますね。複数のジャンルに出店する狙いはどのようなものがあるのですか。

 

5月にオープンしたラーメンのまめぞう浦和店

 現在、3つの業態、ラーメン店については「まめぞう」「ばんぶる」を中心に5つのブランドを展開しています。創業当時から1つの業態・ブランドではなく、複数の異なる特徴を出した店舗を展開していきたいという想いは強かったですね。

 一般的に1つの業態・ブランドに絞ったほうが運営も作業も効率化できるというメリットはあります。でも、会社として、ブランドの数は「武器」だと思っています。使える「武器」をたくさん持っていれば、どのシーンでどの「武器」を使おうかという、戦略を練ることができるし、リスク分散にもなると考えています。

 

 

―10年前の記事では「10年後には海外出店、20年後には世界店長会議」と夢を語っていましたが、現在、海外進出も含めてどのように考えていますか。

 

 ただ単に出店するだけならいつでもできますが、今は戦略の中に「海外」という選択肢はありませんね。今は大手チェーン店とは違った客層をターゲットに戦っていきたいと思っています。
 チェーン店はたまたま店の前を通りかかった方など、スポット的な客層が多いのではないでしょうか。ジンクルの店舗は、ご近所の方、地元の方に通っていただけるような店を目指しています。例えば、ご近所の田んぼの田植えを手伝ったり、そこで収穫された米を使う地産地消の動きも進んでいます。また、地域の祭りへの出店なども各店舗の自由にさせています。
 そういう意味では、今は埼玉や郊外が拠点であり、必然的にビッグシティや海外という選択肢がないのだと思います。
 でも、いつかは力をつけて、大手チェーン店と同じ土俵でガチンコ勝負をしたいと思っています。今回の浦和への出店はある意味、勝負かもしれません。
 浦和店は開店して間もないですが、幸い好評でこれからが楽しみな店舗ですね。

 

経営者としてのターニングポイント

 

―この10年で5店舗から15店舗と大きく飛躍されました。多店舗展開をしていく中で、苦労もあったかと思いますが。

  

 そうですね。この間、すべてがうまくいったわけではなく、いくつかの店舗の撤退も経験しました。特に2009年から2010年にかけて、一番辛い時期でした。新業態アジアン料理「オリエンタル・マンゴー・カフェ」の出店と撤退、製麺やサイドメニューの生産拠点である「商品部」自社工場を設立しましたが、うまくいかず閉鎖しました。
 また、商業施設のフードコートへの出店に備えて、多くの人員を確保しましたが、人材育成が追い付かず人件費率が急激に上がり、資金的にも困窮しました。

 

―原因には、どのようなことがあったのでしょう?

 

 事業の成長と組織の成長のバランスが崩れてしまったのだと思います。
 この時期はどんどん業績も下降していきました。「これじゃあかん!」と思い、全社に『スクランブル体制突入!』と発信しました。各店舗の家賃交渉や社員の待遇面も含めた徹底的なコストカットを約1ヶ月間で一気に対応しました。
 当時、中核を担っていた従業員を各店舗に戻し、店舗の底上げを図りました。従業員にとっては待遇が良くなるわけでもなく、逆に負担だけが増えたという状況。その過程の中で、残念ながら会社を辞めていく人もいました。

 

―事業を立て直していくための苦渋の決断だったわけですね。

 

 中核社員を中心に問題を共有して、みんなが結束して全力で頑張った。その甲斐もあって、2、3年で業績をV字回復することができました。
 今にして思うと、もっと前から対応ができたのではないか、と自問自答するばかりです。当時の経験は、私の経営者としてのターニングポイントとなりました。もう二度とあの時のような事はやってはいけない、と強く思っています。同時に私を助け、結束して危機を乗り越えてくれた仲間たちには感謝してもしきれません。

 

人材が肝 ~『道場』と『アジト』~

 

―厳しい状況を乗り越えたのは、社長を支えた仲間、従業員さんの存在があったわけですね。結束という話がありましたが、全員が結束する土台を作るような取り組みをなさっていたのでしょうか?

 

 基本的には、コミュニケーションをしっかりとる、ということに尽きると思います。具体的な取り組みとしては、『道場』と呼んでいるものがあります。
 『道場』は、月に1度くらいの頻度でやっている従業員が直接私に直談判できる、話し合いの場のようなものです。店舗や立場など関係なく、ランダムに従業員を数名集めて行っています。時には、アルバイトだけを集めてやることもあります。 

 

―『道場』では、どのような話がなされているのですか?

 

 うちの会社は財務諸表も店長会議の内容も全てオープンにしているので、今後の運営方針や会社理念など、『道場』ではざっくばらんに話をしています。
 『道場』を始めた当初は、経営理念や私の想いを発信する意味合いが強かったのですが、徐々に社員と意見を戦わせる場となりました。社員の疑問や業務上の改善提案、仕事をしていて感じたこと、なんでも直接私と話して、意見をぶつけて、会社としてのベクトルを全員で共有していきます。
 ここでは社員が私に噛みついてもいいし、私も負けじと社員を投げ飛ばします。社員一人一人の問題意識や成長を見て取れるので、楽しみにしている反面、思ったほど成長しておらず、がっかりすることもありますが…。
 社長という立場としても、会社が大きくなるにつれて、方向性が見えなくなりがちです。社員の想いを聞き、方向性を見失わないように、私自身、常にアンチエイジングを心掛けている感じです。

 

―他にも『道場』のような場はあるのですか?

 

 経営者対従業員が『道場』だとしたら、従業員同士のコミュニケーションを図る『アジト』というものがあります。『アジト』は学生時代の部室のようなイメージで、各店舗に配置されて散り散りになっている従業員がコミュニケーションを取れる場所です。もともとは本部業務や商談などを行う目的で作りましたが、従業員がいつでもだれでも使える場所として活用しています。
 普通、飲食店の従業員、アルバイトというと、どうしても家と店舗の往復になりがちです。たとえ同じ会社であったとしても、他の店舗の従業員と顔を合わせることもなければ、ゆっくり他愛もない話しをすることもありません。そうなると「会社」への帰属意識も薄くなりがちです。
 もっとコミュニケーションをとって仲間とのつながりであったり、仲間意識を大切にしてほしいし、私も従業員同士の仲間意識を大切にしたいと思っています。
 ここに来れば、慕える先輩もいるし、かわいい後輩もいる。そんな場所があって、関係を築くことができれば会社全体として仲間意識も強くなるし、何かあった時、助け合うことも容易にできると思うんです。

 

2012年グアム合宿にて

 

―コミュニケーションをとることで、従業員さん同士の仲間意識や会社としての一体感が生まれてくるわけですね。

 

 それが今のうちの会社の肝だと考えています。各店舗、従業員のベクトルをいかに共有するか、それが重要だと思うのです。
 また、コミュニケーションという意味では、年に一回、従業員を対象に研修旅行に行っています。普段、店長はまとまった休みがなかなか取れないので、みんなで無理やり一週間休みを取って海外旅行に行きます。
 普段の店舗とは違ったシチュエーションで会社の仲間と集まることで印象に残るし、思い出になりますよね。その思い出が、みんなの会社であり、結束力、仲間意識をより一層強くすることができると考えています。

 

―『道場』に『アジト』、ジンクルさん独特の人材育成をしていらっしゃいますね。

 

 人材育成の方法としては、『道場』にしろ、『アジト』にしろ、アナログすぎるのかもしれないと思うこともあります、しっかりとカリキュラムという形になっているものではないので、手間もかかるし大変です。
 でも、面と向かって、私に噛みついて、私も投げ飛ばしてということを続けていけば、言いたいことを本音でぶつけ合える、楽しくてワクワクするような、強い会社になると思います。これからもそれを大事にしていきたいですね。

 

取引業者とのつながり

 

―人とのつながりや仲間意識を大切にされていますが、仕入先など業者さんとのつながりで意識されていることはありますか。

 

復興支援の炊き出しの様子

 品質がいいというのはもちろん大事ですが、会社、商売人としての姿勢がジンクルの目指す方向性に近かったり、損得だけではない部分を共有できる業者さんとは長いお付き合いになっているところが多いですね。
 例えば、震災の際の復興支援。2011年4月から6月にかけて合計4回、宮城県名取市と石巻市へ赴き1,440食分の炊き出しを行いました。その際に創業時から付き合いが続いている業者さんが、うちの復興支援への取り組みを聞きつけて、向こうから一緒に来てくれると言ってくれました。
 復興支援では、店舗営業は休まず、営業終了後に食材や機材を車に乗せて被災地まで行きました。復興支援担当のリーダーが各市役所と連携を取りながら、各回の参加者を編成することで、多くの社員が炊き出しに参加することができました。多くの方から感謝の言葉をいただきましたし、我々もとても貴重な経験をさせてもらえたと思っています。支援に協力してくれた業者さんにも感謝をしています。
 ジンクルとして事業を長く続けていき取引を行っていくことが、長く取引が続いている業者さんへの恩返しにつながると思っています。
 今後もこれまで築いてきた業者さんとの関係を大切にしていきたいと考えています。

 

 

今後のジンクル

 

―今後の事業展開についてどのようにお考えですか?

 

 少し抽象的になりますが、組織としてよどみなく流れていくような体制をつくっていきたいと思っています。
 創業13年ともなると私も仲間もそれ相応の年齢になってきます。いつまでも若い時の体力があるわけではない。そんな中、一人一人ができる業務の範囲を見極めて、それぞれの成長ステージを会社として準備してあげたいです。社員それぞれが年齢を重ねても会社に能動的な働きかけができる体制をつくっていきたい。それが店舗を増やすことなのか、職種を増やすことなのか、今はその方法を模索している段階ですね。

 

―人材の面ではいかがでしょう?

 

 ジンクルの考え方やポリシー、DNAを受け継いでもらえる人材をもっともっと増やしていきたいと考えています。人材への投資は目に見えて成果がわかりにくいけれど、面白いこともたくさんあります。
 人材が花を咲かせるには、土を耕したり、水を上げたりと育てる側にも色々な準備、手間が必要です。育てられる側にも芽を出そう、花を咲かせ続けようという努力が必要です。
 今日も明日も私は畑に向かい、人という名の種と真正面から向き合っていきたいと思います。

  

 

取材を終えて

 お話の中で「仲間」「結束力」という言葉を多く使われていた小林社長。新しい業態にチャレンジし、時には撤退という厳しい経営判断も下しながらも成長してこられたのは、社長の「人」に対する、強い思いがあったからこそ、だと感じました。
 また、10年後に更なる発展を遂げた株式会社ジンクルを読者の皆様に報告できるよう、応援していきたいと思います。 

(木下直人)