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第一経理ニュース

第60回定例一・一会記念講演

と共に生きる

 

 

 

 

 


講師 : 畠山 重篤 
NPO法人 森は海の恋人 代表

 

 

東日本大震災から3年、牡蠣養殖職人:畠山重篤さんの記念講演の内容をお伝えします。

 

 

東日本大震災

 

 岩手県気仙沼出身で親父の代からの牡蠣・帆立の養殖をし、私は2代目で現在息子達が3代目、また4代目の孫もお父さんの仕事を継ぐと言っておりますので、そうすれば100年続くことになります。
 そんな中で3年前に東日本大震災が起こってしまいました。三陸は昔から津波の常襲地帯であり、私も50年前にチリ地震の時に津波を経験していました。今回のはその時よりも10倍ぐらいの大きさの津波が押し寄せてきました。そして養殖場・作業場・船・車・家などありとあらゆる物がなくなってしまいました。
 その中に私のお袋も含まれておりました。昔から強い母親だったものですからもしかしたら生存しているのではないかと思っていたのですが・・・何とも言えない気持ちで。顔を白い布で覆われ、横にされた遺体を確認する中で、息子がおばあちゃんの靴だと気付いてお袋だと判明しました。苦しい顔をしている事を心配していたのですが、意外と柔和な顔をしていたのでその点は安心しました。そして顔の泥を洗ってあげ、椿の花が大好きだったものですから、その模様の入った手拭いをかけてあげたのです。
 残された者は生きなければならない、商売もやっていかないといけない、と思っていても復活する事が思い描けない状況でした。20m以上の水の塊がありとあらゆる物を根こそぎ持って行ってしまったのです。海辺から全ての生き物の姿がいなくなってしまったのです。

 

復活への養殖

 

 牡蠣は海の中の植物プランクトンを食べて成長するのですが、それがなくなってしまったのではないかと思い、海が生き物を育てる力を失ってしまったのではないかと心配していました。1か月半ぐらい海を眺めていたら孫が「海に魚がいるよ!」と言ったので見に行ってみると小魚が何匹か泳いでいたのです。少し自然が戻ってきたのかなと思いましたが、一番大事な植物プランクトンはどうなのかなと思いました。それを見るには顕微鏡でないとわからないのです。
 私は10年前から京都大学との接点があり、『森は海の恋人』運動といって森と川と海の大事さを養殖の立場から訴えて活動してきました。その教授に植物プランクトンの調査を依頼しましたら、海には牡蠣が食べきれないほどのプランクトンがいることが判明したのです。本当にほっとして大喜びしました。魚の養殖業は売上の6割がエサ代です。ところが牡蠣はエサ代はかかりません。頑張ればまた町が復活できると思い、沖に養殖場を一から作り始めました。
 私には息子が3人おりまして、それまでは様々な場所でそれぞれ働いておりましたが、こういう状況で3人とも地元に戻って今では3人とも復興の為に働いております。
 そして息子3人を中心に何人か共同で色々出し合いながら頑張っていこうということになりました。
 夏場頃から牡蠣の養殖の種付けをして、通常1年半かかるものを、年明けにはいかだが沈みそうなほど重く大きくなっておりました。収穫してみたらとても良い物になっていたのです。
 まずは仮設の人達に少しばかりずつ配ったら、皆さん涙を流して喜んでくれたのです。
 そして3月ぐらいまでは仮設で暮らしている方の何人かにお手伝いいただきまして、支援金から少額ながら給与を払うことができました。お金も動き始めて復活への勇気がみんな持てるようになったのです。
 1年目は散々たるものでした。2年目の決算は形ができはじめ、3年目の今年は支援もあり何とか黒字に持ってきています。

 

“森は海の恋人”運動

 

 平成元年から始めた森に落葉広葉樹を植える活動、今年で25年目の『森は海の恋人』運動の結果だと確信を持ったわけです。
 なぜ森に木を植えるかというと、海のプランクトンは山の木から川に溶け出す成分で生きているようなものなのです。いわゆる森林が海を育てているといっても過言ではございません。
 例えていうなら東京湾と鹿児島湾の比較で、湾の大きさはほぼ一緒なのですが、どちらが多く魚が採れるかというと東京湾のほうが30倍も魚介類が採れるのです。東京湾に流れ出る川は16本もあります。それらの川から流れ出る栄養分にプランクトンが多く含まれ餌が豊富なのです。背景にあるのが武蔵野の森林なのです。その中で森の腐葉土から溶け出す“フルボ酸鉄”とよばれる鉄分の量によって左右されるといわれております。
 世界三大漁場とよばれております三陸沖は、広大なロシアと中国を流れるアムール川からオホーツク海を通って、豊富なフルボ酸鉄を含んだ海水が流れてきてることが分かったのです。

 

地道な活動から世界へ

 

 ところで私は昨年、民間人で森林に関して功績者を選んで顕彰する「フォレストヒーローズ」とよばれる世界の5人に選ばれ、国連で表彰されました。森は海の恋人運動が世界に伝わったと実感しました。最近では小学校の社会の教科書だったり、今年4月からは高校の英語の教科書に10ページにもわたって記載されています。そこで英語の表題に「森は海の恋人」をどう訳すか悩みました。ダーリンやラバーなどではマッチせず混沌としてたところで、この活動を通して両陛下に何度かお会いする機会があり皇后様に相談いたしましたら「long for(お慕い申し上げます)」を使ってみてはどうかとおっしゃっていただきました。 この訳は素晴らしいと“The Sea is longing for the Forest”という訳に決まりました。この訳を国連で発表したところ大喝采をいただきました。
 皆さんも数字の世界で毎日大変かとは思いますが、森・川・海を通して自然の事もたまには考えていただければ幸いです。そして何か一つでも今後の仕事に役立てていただければと思います。
 本日はご清聴ありがとうございました。

(文 田中 孝幸)