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随想

ワークライフバランス

弁護士法人 パートナーズ法律事務所
弁護士 原 和義


1 4月11日付けの埼玉新聞によると、埼玉県立高校の教諭が、担任を務める高校の入学式に有給休暇を申請し、息子の入学式に参加したことで、県の教育長が、注意を促したという。同県では、同様な理由で入学式を欠席した担任が計4名いたという。
このことが、私のフェイスブック(FB)上でも、マスコミでも賛否両論の意見が交わされている。
なお、公務員も労働者であり、正当な権利行使として有給休暇を事前に申請した上で、休暇を取ることは、法律上何ら問題はない。しかも、有給休暇の申請に、理由を付することは必要なく理由を問うことの方が違法となる。

 

2 「教師の風上にもおけない」「公私混同も甚だしい」「即刻教員免許を剥奪すべきだ」との怒りのコメントがFB上では飛び交う。表現の自由(憲法21条)とは、自分と違う価値観や意見が表明される場を保障することであり、このような「常識的」意見の表明を私は心から歓迎する。しかし、「空気を読まずに」堂々と息子の入学式に出席した教師の行動は、法律上何ら非難される余地はなく、このような少数派の個性的な教師が、未来の日本を切り開く「非常識」な教育を担ってくれることを心から期待する。私の恩師ともいえる憲法学の大家である奥平康弘先生(東京大学名誉教授)の口癖は、表現の自由をはじめとする人権とは、「誰も支持してくれない」「時には眉をひそめられるような」マイノリティ(少数者)の権利を保障することにこそその意味がある、というもので、このようなトピックが話題になるときにはいつも先生の言葉を思い出す。

 

3 4月9日のイギリス・ガーディアン紙は、フランスの新労働法は、デジタル産業、コンサルタント産業に従事する労働者に、就業時間外にメールでの返信をさせてはならないという規制を行うことを報じた(規制は、グーグル、フェイスブック、などの著名企業などにも及ぶ)(注1)。フランスでは、1999年に週労働時間を35時間に規制する法律が施行されたが、スマートフォーンの普及で、この原則が骨抜きになっていることから、新規制の導入が決まったという。これによりフランスでは、午後6時以降は、仕事のメールを労働者に見ることを強制してはならないという規制がなされる。この記事は、一日6時間労働制(週30時間制)を試行的に導入したスイスのヨーデボリ市の例も併せて紹介し、ワークライフバランスについての読者の意見を募集している。なお、労働法に詳しいある弁護士によると、フランスでは、バカンスの期間に裁判所に訴訟を提出することには、弁護士会の許可がいるらしい。
文部科学省の調査によると、メンタルヘルスを害して休職する教員の数は、この10年間で約3倍に増えているという(注2)。
日本の入学式をめぐる公私の議論、欧米のワークライフバランスの議論は、個人のライフスタイルと仕事・公の関係をどう調和させるかを考える格好の材料を提供してくれている。ちなみに、私は、この原稿を日曜日に出勤し書いている。

 

(注1)
(http://ggsoku.com/cul-on/france-federation-limit-overtime-mailing/)

(注2)
(http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/088/shiryo/__icsFiles/afieldfile/2012/03/16/1318684_001.pdf)