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第一経理ニュース

随想

ろくでなし子は人ごとなのか

 

 弁護士法人 パートナーズ法律事務所
弁護士 原 和良

 

 12月3日、警視庁は、アーティストのろくでなし子こと作家の北原みのりを、わいせつ物公然陳列罪(刑法175条)の容疑で、逮捕した(2年以下の懲役又は250万円以下の罰金若しくは科料)。
 ネットやスポーツ紙上では、ある意味お茶の間話題としておもしろおかしく報道されることがあるが、法律家から見るととても不可思議な権力の行使に対し、恐ろしさを感じざるを得ない。

 

 逮捕・勾留の要件

 ろくでなし子の行為(自分の性器を型どったボードを3Dデータでメール送信し、また、データを記録したCD―Rの予約を受け付けた疑い)が、はたして「わいせつ物」の陳列にあたるのかは、きわめて疑問であるが、それは置くとしても、逮捕・勾留という強制的な身体拘束の必要性は全くない。
 市民を逮捕するには、罪を犯したことを疑う相当な理由(刑事訴訟法199条1項)と逮捕の必要性(同2項)が必要である。逮捕状の請求を受けた裁判官は、諸般の事情に照らし、被疑者が逃亡するおそれがなく、罪証を隠滅するおそれがない等明らかに逮捕の必要がないと認められるときは、逮捕状の請求を却下しなければならない(刑事訴訟法規則143条の3)。
 このような観点から見た場合、2人は、仮にそれがわいせつの罪にあたる疑いがあったと仮定しても、逃亡、証拠隠滅のおそれは全くないのであり、違法逮捕である。
 北原氏には、逮捕後の勾留は却下されたが、ろくでなし子については、勾留(最大23日間)が認められた。

  

3 表現の自由

 何がわいせつかどうかは、その国の文化や国民意識等の関係で時代とともに変化する。その解釈権を権力に与え恣意的に取り締まりをさせることは、市民の表現行為を萎縮させる表現の自由(21条)の侵害になりかねない。
 今回の、逮捕劇について、このような観点から、批判するメディアが極めて少なかったことに、ある意味メディア・マスコミの批判力の低下、権力チェック機能の低下を感じざるをえない。そしてそのことは、12月10日に施行された特定秘密保護法の今後の運用にもどれだけ表現行為や知る権利の保障がなされるのか、大きな危惧感を持たざるを得ない。

 

 特定秘密保護法施行

 特定秘密保護法では、国の安全保障にかかわる防衛や外交、スパイ活動防止、テロ防止の4分野について、行政が秘密事項を指定し、公開しないことができ、これを漏らそうとしたものには、最高懲役10年の厳罰が科せられる法律である(国家公務員法は、秘密の漏洩に対して、懲役1年の刑を規定しており、多くのマスコミ、法律家は現行法でも秘密漏洩の管理は十分に可能だと考えている)。
 国民からみると、何が秘密にされたのかは、全く不明である。
 12月10日の報道によると、既に、防衛省の指定対象秘密は自衛隊の作成などに関する情報約4万5千件、外務省は外国からの情報提供など2万1千件の指定対象秘密の指定作業に入ったという(東京新聞より)。最終的には、全体で2014年12月末までに約40万件が、秘密指定される見通しという。膨大な、秘密件数であり、秘密国家ができあがろうとしている。

 

 スケープゴート

 ろくでなし子に戻ると、このスケープゴートのような逮捕・勾留劇について、危機感がない社会の雰囲気が、いつか一般の市民が、そして自分が管理対象になり目・耳・口がふさがれることにつながることになるのではないか、と心配せざるを得ない。
 総選挙後の新しい政治勢力の中で、しっかりと監視の目を持ちたいものである。