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第一経理ニュース

我が社の原点

 開発への溢れる思い ~人に支えられ歩んできた道~

 

p2-社長

 

 

 

 

三協技研株式会社
代表取締役 円戸 幸雄 (えんどゆきお)

 

 埼玉県北足立郡伊奈町にある工場。ここ、三協技研株式会社は複合シートのラミネート加工を専門としています。ラミネートとはどのような素材なのか?その素材から、どのような商品が生まれたのか?社長の人柄と、その類まれなる着眼点から生まれる様々な商品について、お話をお聞きしました。

 

 

聞き手 : 嘉松 毅一郎

 

 社長を支える人脈

 

―社長の経歴を教えてください。

  一番最初は大阪の染色加工の会社に入りました。そのあとは旭化成グループの工場でポリエチレン製造技術の開発の仕事をしたり、また別の会社では資材開発の仕事をしたり、ワックスの加工の開発をする仕事などもしました。
 染色工場では、名のある方々に加工技術の理論や応用実験を指導していただきました。業界の方々ともご縁を作っていただき、それが人生の宝となっています。

 

―色々な仕事と出会われているのですね。

  はい。開発の仕事をしていると、深入りしすぎてしまい、その分野をさらに極めるために思い切って転職する、ということが多々あったのです。
でも、そうやって多岐にわたる分野を研究していたおかげで、人の目にとまり、自分の会社を持つことにつながりました。

 

 いち技術者から独立へ

 

―三協技研はどのような経緯で設立されたのでしょうか?

  私が佐伯紙工所で働いていた時に、ある会社の方が、私にEVA樹脂を使った製品の工場を作ってみないかと提案してきたのです。EVAというのは、特殊なポリエチレン樹脂で、粘着テープなどの糊剤として使われるものです。
 毎週やってきては熱心に説得してきました。仕事とお金には不自由させないというので、「じゃあやってやろう」という気になりました。そして、その会社から紹介された方と一緒に、立ち上げることになったのです。

 

―熱烈なアプローチがあったのですね。

  そうですね。そのころには、私は産業資材関係に特化した研究をしていて、色々なものを貼り合わせるという技術も手にしていました。
 私のそういうところを目にかけて誘っていただいたのだと思います。私も好きな開発ができるということで、やる気になったのです。

 

 独立への道のり

 

―では、独立はスムーズにすることができたのですね。

  いえ、そううまくはいきませんでした。いろいろな事情やタイミングの悪さもありまして、結局最初に計画していた案はダメになってしまったのです。
 それであわてていたところで、積水化成品工業から助言を受けることができ、今の会社を始めることとなりました。

 

―三協技研という名称はどういった意味でつけられたのですか?

  「三社で協力して作り上げる」という意味でつけました。
 今お話した通り、すんなりと会社を立ち上げることができたわけではありません。
 障害がある中で、手助けして、支えてくださった、一緒に作り上げてくださった方々がいます。その方々への感謝と、それを忘れないようにという思いを込めました。

 

 更なる困難

 

―立ち上げ後も、ご苦労はありましたか?

  まず工場の場所、ここを借りることがとても難しかったです。
 地主さんのところに交渉に行っても、全く知らない人間に貸してくれるはずもなく、困っていました。
 そんな時に、大日本インキの常務さんに会いました。私が大阪の会社に勤めていたころに懇意にしていただいた方です。しばらく会っていなかったのですが、駅のホームで偶然会うことができました。
 事情を話したところ「協力するから何とか頑張れ。」と言ってくださったのです。
 この方が地主さんを説得してくれました。

 

―晴れて工場を建てることができましたね。

  はい。しかし今度は設備を入れる段階で一山ありました。危うく使えない設備を購入しそうになったのです。
 そのときも、私が以前働いていた職場の先輩に助けていただきました。
 工場を作るときに、ある設備を入れようと見積もりを取って、発注する直前まで来たものがあったのですが、大日本インキの方に言われてやめたのです。「どういうところで使うのか、実態をはっきりさせたほうがいい」と。そこで調べたところ、その設備により開発しようとした商品が、市場に需要がないことが判明しました。それですっぱりとやめました。
 けれども工場は完成してしまっていて、困ってしまったのです。その時助けてくれたのが、積水化成品工業です。「ひとまず落ち着くまでは、設備を貸すから、仕事も発注するから何とかやってくれ」と言ってくれたのです。

 

 人とのつながり

 

―お勤め時代の人脈が社長を支えてくれたのですね。

  そうですね。たくさんの困難がありましたし、とても大変でした。それでもいろんな方が助言をしてくださり、助けていただき、今の会社をスタートすることができました。

 

 ラミネートという素材

 

―御社ではどのような製品を作っているのですか?

主力商品 除湿剤のフィルム

主力商品 除湿剤のフィルム

 代表的なものは、一般家庭で使用している除湿剤のラミネートフィルムです。水蒸気は通すけれど、水は通さないという仕組みになっています。
 容器の中には吸湿剤が入っていて、わが社のラミネートフィルムを貼って閉じています。ラミネートは1ミクロンほどの非常に細かい穴が開いていて、水蒸気だけを通します。湿気のあるところに置いておけば、吸湿剤が湿気をどんどん吸い込んでいきます。ただし水は通さないので、吸い込んでたまった水が外に出ていくことがないのです。
 湿気のある下駄箱やタンス、ベッドの壁際などに置いておけば、カビが生えることがありません。開発して20年が経ちますが、今でも売れ続けている商品です。

 

 社長の発想力

 

―社長のアイデアを頼りに様々な相談が持ち込まれるそうですね。

  そうですね。電線会社や住宅会社などから相談が来ました。
 その電線会社の相談というのは、「光ケーブル製品にトラブルが多発して困っている。」というものでした。これは会社を立ち上げてすぐのころやったものです。初めて採算の取れる思い入れのある仕事になりました。
 まず光ケーブルというのは、125ミクロンのガラス線を、溝を入れたプラスチックにはめて作ります。この電線会社では、ガラス線がうまくはまらないというトラブルが頻繁に起きたのです。
 これをどうにか解決してほしいとのことでした。
 結果的には、トラブルの原因というのは、管理の仕方でした。保管中に、ガラス線をはめる溝に傷がついていたのです。繊細な製品ですので、少しの傷で、ケーブルは入らなくなってしまいます。
 そこでうちが作ったのが梱包材です。
 その名も「ノンキッス」です。

 

ノンキッス

ノンキッス

 ―面白い商品名ですね。どのような意味ですか?

 「触ってはいけませんよ」、という意味です。ある程度圧力をかけると発色するフィルムで、複写式のカーボン紙、あの原理を使っています。
 実際に使用しているのはカーボン紙ではなくいわゆる感圧紙ですね。富士フィルムの技術者の方々にも力をお借りして開発しました。この方々も、私の先輩です。

 

 ―「ノンキッス」の効果はどうでしたか?

  それはもう、抜群でした。
 光ケーブルを作っていたのは、最初に相談された会社を含めて3社あったのですが、3社とも、「ノンキッス」を使用して一ヶ月でケーブル破損の原因が判明しました。対策もあっという間にできました。
 本来はこの時点でもうこの商品は必要なくなるのですが、先方は5年間使うと言ってくれました。それで採算が取れて、やっていくことができました。

 

―住宅会社の相談はどのようなものでしたか?

p2-ノンセパ目地

ノンセパ目地材

  これは相談されたというよりは、自分で発掘した仕事ですね。目地テープを開発しました。
 住宅メーカーの下請け工場を見に行ったときに、すごく無駄なことをしていると思ったのです。住宅メーカーの作る住宅は、鉄骨でできています。この鉄柱と外壁の間には、クッションを入れなければならず、そのクッションを、鉄骨に貼るという作業があります。
 その作業は、テープについているセパレーターという台紙をはがして、そしてクッションを貼る、という工程を3人で行う必要がありました。鉄骨とクッションの間に貼るテープですから、それなりの大きさがあるので、セパレーターをはがして貼るなどという作業は、一人ではできないのですよ。
 その作業風景をみて、無駄だなあと感じたのです。だから、セパレーターのついていない、ピッと伸ばせばすぐ貼れるテープを開発しました。「ノンセパ目地材」です。

 

―特許を取得されていますよね。

  はい、取りました。さきほどの「ノンキッス」も取得しています。
 この目地材を使ったら人件費が1/3になりました。3人でやっていた作業を、1人でできるようになったからです。

 

 どんなものからでもアイデアを

 

p2-改造された「くるくるまき」

改造された「くるくるまき」

―とても古い扇風機を譲り受けて、便利道具を作ったそうですが。

  年代物の扇風機が捨てられている現場に居合わせましてね。タッチパネルではなくて、ボタン式の。そこで閃いたのです。次の瞬間には、その方にお願いして、扇風機を持ち帰ってきてしまいました。
 そして、商品を巻き上げるための機械に改造したのです。

 

―それはどのように使うのですか?

  今まで手で巻いていた商品があったのですが、それを巻くのに使っています。
 もうこれがないと大変なんです。くるくるっと、商品を巻き上げてくれるんです。手作業で巻いていたのではとてもじゃないがやっていられないですよ。もうこれがなかったころには戻れませんね。今も工場で3台回っています。
 従業員は「くるくるまき」の愛称で呼んでいます。

 

 作業に最も適した設備を

 

―他にも改良した機械がありますか?

  改良していない機械はありませんね。もとの機械は一応買うのですが、すべて調整して使っています。そのままの形で使うことはまずないですね。ひと手間加えることで、一段と使いやすくなりますよ。

 

p2-個性あふれる従業員のみなさん

個性あふれる従業員のみなさん

 

 ともに働く人々

 

―人材などはどうやって集めるのですか?

  県の職業安定所を活用して、幅広く募集します。
 この業種は誰もが全く経験していません。その場その場で、ああしたほうがいい、こうしたほうがいいといって作っていきます。だから、経歴にはこだわりません。一度募集したら、20~30人も集まったこともあります。
 そういったわけで、鉄工所に勤めていたとか、運転手をやっていたとかいう人もいます。現在の従業員も経験のない方たちです。
 だからこそ、偏りのない、いろいろなアイデアが出てくるのだと、私は思っています。

 

―従業員の方々は、社長を尊敬してついてくるのでしょうね。

  いやいや、それはよくわかりません。ただ、とにかく私のことを「面白いな」と思ってくれてはいるのかなと。

 

 今後の展望

 

―新たな商品の開発はどうですか?

  ハムの包装紙の開発を進めています。お歳暮やお中元で贈るようなハムです。
 ハムにはふつう紐がかかっているでしょう?今までは田舎のおばあちゃんの内職で、網掛けして、ハム業者に納めていたのです。これでは時間もかかる上に、衛生面でも問題が指摘されていました。
 わが社が何を作ったのかといいますと、この網掛けの代わりとなる包装紙を作りました。ハムをカバーするラップがあって、それにすでに網目がついているものを作りました。
 このラップにもラミネートが使われています。ラミネートは通気性があります。スモークの工程には、水分を取る、消毒する、味を付けるといったものがあるのですが、ラミネートならば、ハムに巻いたままですべての工程が可能です。これで、衛生面もかなり改善されました。
 ハムは水分が70%以上含まれています。水分を全部取ってしまうとカラカラになってしまいますので、適度な水分を保つために、通気性もいろいろ工夫しました。

p2-開発されたハムの包装紙

開発されたハムの包装紙

 O・C・Iという会社と手を組んで、ずっと開発を続けていたものが、軌道に乗ってきたところです。最初に案を出してからここまでで、8年かかりました。これを作るために、国の助成を受け、設備投資もしています。
 こういった商品は、一度採用されれば、しばらくは規格が変更されることはありません。これをきちんと守っていけば、安定した収入が見込まれます。
 今後は既存の商品に加え、この包装材も主力商品になってくれればと思います。

 

 次の世代へ

 

 この商品を確実に守って、私の次の代の人たちに残せれば、安心できます。私はかなり自由に好きな開発をさせてもらいましたが、三協技研には、安定したものを残してあげたい。その基盤がある上で、どんどん新しいものに挑戦して、末永く続いていってほしいと思います。

 

―本日は貴重なお話ありがとうございました。

神谷 友美