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第一経理ニュース

新春経済セミナー

2015年経済展望
 
日本経済の課題と再生への道筋 ~消費税増税は本当に必要か~

 

 2015年2月3日、協同組合DDKと第一経理一・一会共催による、新春経済セミナーが行われました。今回は、大阪経済大学経営学部客員教授岩本沙弓氏に講演を頂きました。その講演のほんの一部になりますが、みなさまにお届けいたします。

 

 

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講師 : 岩本 沙弓
    (大阪経済大学 経営学部 客員教授)

 

 

  日本の現状

 

 現在、日本の企業のうち、99.7%が中小零細企業、わずか0.3%が大企業ですので、日本経済を増強したいのであれば、中小零細企業を支援するのが、本来の経済政策であるはずです。また、中小零細企業は地方にも数多く存在し、従業員者数の約7割の雇用者でもありますので、地方創生や雇用の面からみても、こうした方々を支援するべきです。
 それにも関わらず現政権は、大企業や富裕層がさらに富裕になることで、その富が滴り落ちるように貧しい者にも浸透する、というトリクルダウン理論を肯定しているようです。しかし、そもそも、滴り落ちたものを恵んでもらう、というような発想自体が不合理です。きちんと所得をもらうのは当然の権利であり、恵んでもらう必要はありません。

 

 為替報告書による世界と日本経済の展望

 

 日本とアメリカは同盟関係にありますので、アメリカ経済が良くなれば、日本経済も良くなります。また、日米関係が良好であれば、政治的に良好な部分が経済に跳ね返り、経済も良くなります。このような観点からアメリカ経済に着目しますと、今、アメリカ経済は非常に好調で、特に今年は、国民の消費活動が牽引していくような、強いステージに入っていくのではないかと思われます。
 ここで、アメリカの為替報告書をご紹介します。最新の報告書によると、グローバル経済は、新興国の市場が大変厳しい状況にあるため、あまり良くないとしています。
 このような中で、オバマ大統領は、中間層の復活を目標に掲げ、中間層の支援こそ、経済政策に最も功を奏すると述べました。特にシェールガスは、その効果をもたらしています。
 他の地域に関する同報告書は、次のとおりです。
 まず、ユーロ圏については、長い視野で見ると、経済的に厳しい状況になるのではないか、とみています。欧州債務危機以降、需要が伸びず、経済が活性化していないのです。デフレ状態が続き、失業率も改善せず、なかなか回復の糸口をつかめない状態にあるといえます。
 次に中国ですが、2007年をピークにその勢いはとどまり、人件費の高騰により、世界の工場にはなりえなくなっています。そのような中で、いま、中国は外需から内需への過渡期にあるといえますが、徐々に厳しい状況になるのではないか、と見られています。
 そして日本については、まず、消費税8%への増税を非常に批判しています。政府は、増税は国際公約であると言いましたが、それは間違いです。なぜなら、税制度はその国の主権にかかわるものであり、それに対して外国が介入するのは、内政干渉であるからです。アメリカはこのことを十分に認識した上で、日本は、増税により経済が縮小し、先行きにも不確実性が増してしまった、世界経済そして日本経済のためには、内需を拡大すべきである、としています。また、量的緩和をしたからといって、財政再建にも内需拡大にもならないのですから、金融政策についても否定的です。

 

■ 消費税増税で不況入りの日本

 

 アベノミクスのもと、確かに賃金が上昇した部分はあります。しかし、実際にあがったのは名目賃金です。大事なのは実質賃金、つまり手取りです。しかし、消費税が8%になった瞬間に、実質賃金はがくんと落ちています。なぜこのようなことが起こるのでしょうか。
 そもそも、消費税は、消費者が負担するものではなく、事業主が負担するものです。よって、今回の増税は、事業主に対する実質増税なのですが、事業主であれば、増税分を商品に上乗せしたいと考え、実際にそうすることが多いはずですので、モノの値段があがってしまいます。消費者は、増税分を超える賃金をもらわなければ、手取りが減るということです。
 表面上の賃金だけ上がったとしても、手取りが減れば消費活動が低迷し、日本経済全体がさらに低迷するという悪循環に陥るのです。
 一方、事業主は、設備投資をできない状況にあります。1989年の消費税導入、1997年の消費税率引き上げの際には、まだ、国内事業主は設備投資をしようという気持ちがありました。しかし、2014年4月以降は、惨憺たる状況にあります。
 日本のGDP(2012年)は、55.9%が民間の消費、15.5%が設備投資ですが、増税はこの両者を直撃し、GDPは2期連続でマイナスとなりました。これは不況の入り口、経済が後退し始めているということです。
 また、日本は例年、輸出依存度が最も低い部類に入っています。決して外需依存型ではない、つまり内需依存型です。それなのに、内需を疲弊させるような消費税を導入することは、日本の経済構造に全く合っていないのです。

 

 GPIF改革

 

 消費税増税による打撃を受け、株価まで下落してしまうことがないように、政府は、株価を上げる施策を講じているようです。
 日本国民の年金を預かり、これを運用するGPIFの運用資産額は、約130兆円にのぼり、市場での通常の運用を行っている基金では世界最大規模といえます。その資産運用先は、これまで、日本国債が60%、株式が17%でしたが、国債の比率を下げ、株式の比率をあげるという改革をはじめました。これにより、株式市場に30~40兆円が流れることとなります。
 しかし、国債に比べ、株式は、元本さえ失う危険性のある、リスクの高い取引です。市場で何かが起きたとしても、東証一部の1日の売買残高は2兆円ですので、30~40兆円もの株式を売って逃げることはできません。本来、扱う資金が大きければ大きいほど、保守的にならなければいけないことは、取引の基本です。また、状況が悪ければ改革は必要ですが、GPIFの過去8年間の運用利回りは約3%のプラスです。
 海外を例にみますと、カリフォルニアの教員、公務員の年金基金は、30兆円のうち50%を株式に投下していますが、運用資産額が30兆円ですので、日本のGPIFとは規模が違います。また、カナダでは、30兆円の年金基金を1000人で運用していますが、日本のGPIFを扱う人員はたったの80数名です。明らかに人員不足です。
 さらに、アメリカの国民年金OASDIの運用先は、すべて米国債と法律で定められています。株式運用をしないのは、そのリスクが高いからです。日本はこのままで良いのでしょうか。何のための年金改革でしょうか。損失がでれば、もらえる給付金が減ったり、納付額が増えたりと負担の方が大きくなります。その負担はすべて国民に回ってくるため、見過ごすことはできません。

 

 金融緩和政策の問題

 

 金融緩和政策にも問題があると思います。日銀がいくら金融機関に資金供給をしても、金融機関が民間への貸し出しを行わないと、その資金は市中に流れていきません。1997年の消費税率引き上げや、1998年のアジア通貨危機を受け、当時、日本経済は小規模の金融危機状態に陥りました。このとき、日銀は最大の資金供給を行いましたが、金融機関の与信枠では民間への貸し出しを行えず、余った資金は各金融機関の日銀の当座預金に積まれました。いわゆるブタ積みです。
 このような資金は、実体経済とはまったく関係のないところで積みあがり、株式や外国為替、不動産などに流れ、資産バブルに繋がりやすい資金となります。しかしその資金は、本来、金融機関の融資により、民間で何倍にもなって回らなければいけません。現段階ではほとんど民間に届いていないのです。量的緩和だけすれば、日本経済が良くなるということには、ならないのです。
 また、一般会計における歳出・歳入の状況は、歳出の増加、歳入の減少が続いており、この是正のために、消費税増税といわれます。しかし、この状況の起点は1989年の消費税導入であり、1997年の消費税率引き上げの際には、さらにその差が広がりました。つまり、消費税増税だけで財政の再建や社会保障費を捻出するということには、無理があるのです。消費税だけではなく、所得税や法人税も見直し、総合的に俯瞰した分析・検証・議論が必要です。

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 消費税増税による今後の影響

 消費税増税の影響は、今後の方が出てくると思われます。3%の増税とはいっても、個人事業主にとって、納税金額は1.6倍になります。これを払えずに休廃業、倒産をする方が増えるのではないでしょうか。
 日本は財政危機だという方もいますが、決してそうではありません。確かに日本政府は1,000 兆円の借金がありますが、資産もあります。そして政府の他に民間もいるわけですから、それら全ての資産と負債を相殺すると、日本の場合、お金は余ります。この余ったお金は海外への貸し出しに回ることになり、日本の対外純資産は、今年5月には340~350兆円にまで増えると見込まれます。
 また、国税における2012年度の新規滞納発生額のうち、トップは消費税です。なぜなら、消費税が、応能負担に反したものだからです。払えない人に払えといっているようなものです。この先、倒産や休廃業はどんどん増えると思われます。統計上の倒産件数は減っていますが、その裏で、休廃業が倍以上に増えているのです。

 

 非関税障壁としての消費税

 

 消費税は、1954年にフランスがはじめて付加価値税として導入しましたが、もともとは、輸出企業へ還付金を渡すための優遇策として作られた税制でした。
 消費税を唯一採用していないのは、アメリカです。アメリカは、税制と市場においては、自由と公平に重きをおいていますので、連邦国家レベルでは特定企業の優遇となる消費税は認めない、という立場にあります。
 一方、州レベルでは、アメリカには、州税として小売売上税があります。これは、小売店が消費者から税金を預かり、預かった税金を国へ納付するという、単段階の方式です。これに対し、日本の消費税や欧州の付加価値税は、生産から消費までの全流通過程において、事業者が払った税金と、消費者から預かった税金の差額を納付するという、多段階の方式です。このため、益税や損税が非常に多く発生してしまうのです。
 輸出大企業は、国内での仕入れの際、製品の価格+消費税を支払っていますが、販売の際には外国の消費者から消費税を受け取ることができないため、消費税を還付してもらう、というのが還付金の仕組みです。しかし、アメリカの上院、中小企業庁等々の見解も合わせますが、自由主義経済では、常に価格競争や値下げのプレッシャーにさらされています。値切りをして仕入れた製品に対し、大企業が消費税を払ったといっても、それは価格に埋もれてしまっています。すなわち、消費税を100%価格転嫁することはありえませんので、還付金ではなく、リベート、輸出奨励金ではないかというのがアメリカの見解です。
 1971年のニクソンショックにより、アメリカは金本位制を停止しました。この原因は、当時、付加価値税に伴うリベートが非常に大きく、それを採用していないアメリカが、貿易において劣勢になったとの分析ができます。
 これは現在も生じている問題です。欧州の付加価値税の税率が20%と高いのは、高福祉のためではなく、関税目的です。リベートを与え関税を設け、さらに法人税を引き下げれば、徹底的な自国企業の優遇策ですので、アメリカはそのような貿易相手国に対し、報復するとしています。そして、消費税を増税した日本も同様に、アメリカの報復対象です。TPPが報復措置の役割を果たしてもおかしくありません。消費税増税で消費者と内需関係の事業者は、苦しんでいる上に、アメリカからの報復となれば、二重苦、三重苦となります。
 これが、消費税25年の歴史です。日本経済は、この25年間で、直接的な内需疲弊と外圧により、ここまで低迷し、格差を広げてしまったのではないでしょうか。

(大部あかね)