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第一経理ニュース

我が社の原点

地域介護で高齢者に居場所を

 

田楽様

左:福田篤子氏 右:夫の福田廣行氏

 

 

 

 

有限会社 田楽(でんがく) 

代表取締役 福田 篤子 (ふくだ あつこ) 氏

 

 

 豊島区南長崎の住宅街にあるグループホーム田楽は、平成19年に区内の認知症高齢者を対象とした地域密着型サービス事業の一環として開設しました。以来、夫妻で地域の一員として地域住民に密着し、愛し愛されながら今日に至っています。
 ※グループホーム:家庭的な環境の中で、生活リハビリをとり入れた共同生活を営む介護サービス。

 

聞き手・文 : 医療事業部 石田 信之

 

 

● 開設に伴う道のりと苦労

 

―最初にグループホーム田楽を始めようとしたきっかけというのはなんだったのでしょう。

 

 夫の両親が体調を崩して、平成12年(介護保険制度スタートの年)から同居し始めました。私共もずっと働き続けておりましたので、働きながら介護をしていく方法としてどういうものがあるかと考えました。幸いここに私共の土地・建物がありましたので、いっそのこと、この場所をうまく使って地域のみなさんのお役にも立ち、自分の両親の介護にも役立つ場所にしようと考えました。

 

―元々介護のお仕事をなさっていたのですか?

 

 それまでは保育園作りの活動をしていました。しかし介護の仕事を始めるとなると、高齢者のことを勉強していかないといけません。まず、ヘルパーの資格を取り、介護老人保健施設(医療ケアやリハビリを必要とする、症状が安定期にある要介護状態の高齢者対象の介護施設)に就職しました。そしてその年にすぐ介護の専門学校に入学し、介護老人保健施設で仕事をしながら、昼間は学校に通いました。試験は元より、授業も実習というのが多く、夏休みなどもありませんでした。結局職場にも迷惑をかけてしまうなど非常に厳しい期間でした。
 3月に卒業し、そこからも様々な苦労をしながら、平成18年に有限会社を設立し、19年にグループホームを開設しました。ちょうど有限会社がなくなる手前で、株式会社など私には作れないと思っていました。ああ、大変だ、有限で作らないと大変だと滑り込んで作ってみたら、あとで銀行の人に「株式会社は簡単に作れるんですよ。」と笑われました(笑)

 

―介護形態の中でもグループホームを選んだ理由は?

 

p2-中の様子 グループホームの現状を変えたいという想いが、まずありました。認知症になる高齢者がどんどん増えていて、大きな民間のグループホームでも虐待があったり環境が劣悪だったりするところもあります。建物の外見は素晴らしくてホテルみたいだと思ってみなさん入居されるのですが、中身は貧困です。看護師がいても介護士がいても、たくさんいる高齢者の方をきめ細かに介護するのは非常に難しい状況のようでした。
 しかし、それを変えていくということは実際大変です。そう思っていた時、仕事仲間から「あなたの思っている小さい場所を地域でつくっていくということが大事ではないか。」と言われました。また、特に高齢者に対する虐待が世間でも注目されるようになった時期だったこともあり、きめ細かな介護をするグループホームを世に提供しようと考えたのです。

 

―開設時はやはり苦労されましたか?

 

 役所から開設認可をもらうことと、最初の数年が特に大変でした。私たちはお金がなくても、とにかくやりたいという想いでしたが、やはり資金がネックになりました。役所から厳しい指導があり、最終的には資金をもう一度組み直して下さいという条件がついて、認可が降りました。そして設計等もろもろの準備を役所とやりとりしながら進めました。
 スタートしてからも、役所の担当の係長さんからもっと頑張らないと駄目と言われました。なかなか詳しく教えてくれないので、こちらは何が駄目なのか理解できず、何をどうすればよいか全くわかりませんでした。指導に来られては「やる気があるのですか。」と、こちらが一生懸命つくった書類をことごとく批判されました。逆に自信のあった防災面に関しては何の評価もされませんでした。「お宅は規模が小さいから要らないのですよ。」と言われて、何かちょっとズレているなと感じていました。
 本当に厳しいことしか言われなくて、こちらの話を全然聞いてくれないように思えました。思えば私たちの方もあんまり信頼していなかったのかもしれません。
 二年目の時だったか指導の時に、思い切って私たちの気持ちを強く語りました。また、役所の求めるものを私たちもしっかり勉強して、活かしていくということも言いました。その後は担当の方の対応がガラッと変わりました。共に頑張ろうという雰囲気になったのです。

 

● 地域密着で和を求め、楽を分かちあう

 

―経営理念についてお聞かせ下さい。

 

 「人の歩み、地域の歩み、そして自然の歩みを理解・尊重し、みんなで力を合わせて、和を求め、楽を分かちあうことに力を尽します」というのが私共の経営理念です。
 どういうことかというと、地域の中にある場所として、そこに暮らす人々の夢に目を向け、生活に目を向ける。その中で自分のところだけが良くなればよいという考えではなく、常に周りの方達の様子を見聞きしながら、自然な形で一緒に生活していこうということです。
 自然の歩みというものを理解して尊重とありますが、入居者の方々と私たち職員が、地域の中心になっていけるような場をつくっていきたい、という想いをこういった言葉で表しました。地域で暮らすということは、自然と向き合うことも大事にしていかないといけません。
 『和』という言葉は仲良くとか穏やかな心持ちですね。障害をもっている方も、高齢者の方も、弱い人も普通の人もみんなで力を出し合っていけたら、良い社会になるのではないかと思います。そういう意味も含めて「和」という言葉が入っているのです。良いことがあったら、良かったね、と分かち合う。ともに確かめ合ったり、ともに喜んだり、ということをやっていけたらいいなと思います。

 

―ホームページの、「田楽が目指す介護」の箇所に「一人ひとり」という言葉が多く出てきますね。

 

 そうです。その「一人ひとり」という言葉はすごく大事ですね。うちは6人の方が入居されていますが、それぞれ生まれも育ちも違います。介護は、とにかくその人その人の思いに応えていかなければいけません。うちは、6人の方お一人お一人のためのケアをしていく場所です。それは簡単なようで非常に難しいのです。6人の方にいっせいにご飯ですよ、食べましょうといって食べさせたり、トイレに行きましょうといってトイレに連れて行ったりして私たちが勝手に時間を決めて進めていくのでは駄目なのです。
 お一人お一人のお体の状態や気分に配慮して、その人に快く暮らしていただくにはどうするのが最適か考えます。お一人お一人が満足していらっしゃるか、どんな思いでいらっしゃるかを常に気にかけています。

 

―どうやってプログラムを立てるのですか?

 

 ご本人とご家族から介護と生活の要望を聞いて、決めていきます。認知症の方だと細かいところまでは話せないとしても、何を望んでいるのか、ある程度は聞き出せます。それをもとに私たちが、この面については積極的に取り組んでいるからこれは継続しようとか、いろいろな面で楽しく暮らしていらっしゃるかどうかをご本人に代わって見直していくわけです。もちろん私達が自己満足してはいけません。ご本人が楽しくなさそうであれば、どうすればよいか見つめ直します。健康面、精神面含めて、穏やかで、且つ張りのある生活を毎日楽しく送っていただく場所づくりのためには不可欠なことです。

 

 お茶会で咲かす地域の花

 

―積極的に地域行事に参加されているそうですが、どんな行事があるのですか?

 

 町会の行事は、まず防災が年に二回あります。あとは盆踊り、秋祭りのお神輿があったり、暮れにはお餅つきをしたり、たくさんの行事があります。ほぼ全面的に参加させていただき、職員も参加しています。お祭りではかなりの人数がお手伝いに入って、裏方をやったり神輿を担いだりしています。
 介護も在宅中心の方向に切り替えられている今、地域の力が大事なのです。私共は施設ですけど、この施設が地域の中で果たす役割として、できるだけ地域の方と繋がりをもち、いっしょに暮らしていく方向へ進みたいと考えています。

 

―お茶会を主催されているとも聞きました。

 

 もう4年目になりますが、毎年そこの公園の桜の木の下で入居者の方々と職員を連れてお茶会を主催しています。もちろん今年も行いました。今回は同じ区域の他の2つのグループホーム様にも、一緒にやろうと声をかけ、ビラを配ったりもしました。そうしたら平日の昼間にも関わらず50人もの方が集まってくださいました。
 ただ、お花を生けたり、当日の朝に公園をボランティアと一緒に掃除をしたり、衝立を持ち込んだり、お茶席をつくったり、お手前をする場所もつくったり…と、お茶を立てることよりも裏方の準備が大変でした。
 しかし、これまで何度声をかけても、ニコニコしているばかりで来てはくれなかった近所の方が、テーブルや椅子を運んでくれました。それがとても印象的でした。また、ある女性は、「一人でいるよりは、おしゃべりができれば一日が少しは充実すると思う。こういう場をつくることはすごく良いことだね。」という感想を聞かせてくれました。ああ、やっぱりこういう場所は必要なのだと感じ、取り組んできて本当に良かったと思いました。

 

p2-お茶会横並び

桜の木の下のお茶会

 

 介護業界に激震!報酬の大幅引き下げ

 

―4月に介護報酬の改定がありましたね。

 

 介護や医療の仕事では各介護行為や医療行為にそれぞれ点数が決められており、それに応じて報酬が出るという仕組みになっています。その各行為の点数が全体として大きく引き下げられました。また、一定の要件を満たすと基本の点数に加算がつくのですが、今回定められた加算についてはまだはっきりしていないとのことでした。
 したがって、加算が実質つかない中で、4月から基本の介護報酬は下がっています。正直かなり厳しいです。業界全体としておしなべて介護業界は潤っているみたいな形で報じられていることが介護報酬引き下げの一因だと思いますが、実際はほとんどのところは潤ってはいません。一部だけです。
 ギリギリの経営のしわ寄せは職員への負担になってしまいます。そんな中で働いていると職員も疲れるので、入居者さんに辛くあたってしまうようなこともあると聞きます。北区の施設で虐待と拘束があったというニュースがこの前ありました。介護報酬が下がることでこのような施設が増えてしまうのではないかという懸念もあります。国の施策ひとつで介護の中身が変わってしまうのです。最低でも介護報酬は引き下げないでほしい。安定した措置を保って頂きたいと思います。
 団塊の世代が2025年に後期高齢者になります。その時、要介護者がものすごく増えると予想されます。そういう状況がわかっている段階で介護報酬を引き下げるということは、とにかくやめてほしいです。
 この報酬がなければうちは運営していけませんからものすごく影響します。実際バタバタと閉じるところも出てきているようです。踏ん張れるところでも、役員の給料を減らして職員に回そうとか、職員の人数を減らすとか、そのような方向にいくのではないかと思います。

 

 事業拡大、そして認知症カフェとサポーター

 

―今後の展望を聞かせて下さい。

 

 この小さい施設だと国の施策が変わるたびに、ハラハラしなければいけません。まずは、できれば事業を拡大したいです。そのために準備を始めてはいます。デイケアやデイサービスの場所をここでつくっていくことを考えています。とにかく職員と一緒にレベルアップをしながら、理学療法士と作業療法士を2人入れて、あとはケアマネージャーが何人か増えてくれればと思います。
 また、取締役をしている夫がケアマネージャーを担当しているのですが、「認知症カフェ」というものを考えています。認知症になった方達、そのケアをしている家族、それから私たちのような職員、入居している方々みんな含めて、いつでもそこでおしゃべりできる場所なのです。最近あちこちにできています。夫は介護食に特化した資格を取りました。田楽では近所の方が食材を持ち寄って、あまりお金をかけずに知恵を出し合って、みなさんが作って食べる、というような場所をつくりたいと言っています。場所ができればみなさん毎日でも来られますしね。
 それから認知症のサポーターという、デパートなどでオレンジのリングをつけた人を置いていて、お買いものに行って帰れなくなった人を手助けする人がいます。そういう認知症のサポーターを全国の自治体で力を入れて養成しています。東京は特に進んでいるのですが、その養成者としての研修を夫が受けました。自分はサポーターをこの地域にたくさんつくりたい、それに努力したいと言っていました。

 

―本日は貴重なお話ありがとうございました。

 

無題


p2-外観 
グループホーム田楽
住所:東京都豊島区南長崎3-36-2
TEL:03-3953-7686
HP : http://www.ne.jp/asahi/gh/dengaku/index.html