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ただいま努力中

国内初、KES構法による木造4階建てのビルを建設!!

 

p6-伊藤社長トリミング

 

 

アイ・ケイ・ケイ株式会社      
代表取締役 伊藤 好則 氏  


 

 板橋区高島通り沿いに堂々と聳え立つ木造4階建てビル。外観は塗装仕上げなしの無垢の杉板が使用されており、杉の美しさを余すことなく伝えています。構造体は当初から耐震性に優れたKES構法と決めていたそうです。
 使用した木材はオール国産材。構造体に使用されている唐松の集成材以外は、自社が開発した乾燥装置「愛工房」で乾燥した木材が使用されています。また、建材の一部には通常使われることのないトドマツが使われており、特に建具はトドマツ固有の白い美しさがひときわ目を引きます。
 そんな木造4階建ての自社ビルを建てたアイ・ケイ・ケイ株式会社の伊藤社長にお話を伺いました。

 

 

そもそも愛工房とは…

 

p6-愛工房

愛工房

 板橋区にあるアイ・ケイ・ケイ株式会社は、木材乾燥機の製造会社です。日本に多く生育する杉(特に黒芯)の乾燥は大変難しいのですが、これを成功させたのが伊藤社長の開発した低温木材乾燥機「愛工房」。
 木も人と同じ呼吸する生きもの。そして本来、木は素晴らしい生命力をもっています。しかし、多くの建物で使用されている木材は高温で乾燥されているため、木の成分等が排出され、木、本来の能力を失っています。
 社長曰く「ベストな温度を木に訊きながら探して、45℃の温度にたどり着きました。この温度では木の酵素を損ないません。生きたまま建物等に使われた木は200年、300年と強度が増していきます。」とのこと。
 愛工房により乾燥された木材は、木、本来の美しさを損なわず、防虫成分・精油成分が残ったままです。なにより木が呼吸して空気を浄化してくれます。

 

木造ビルを建てたきっかけ

 

 そんな画期的な乾燥機を生み出した伊藤社長ですが、当初は自社ビルの建設など考えてもいませんでした。
 きっかけは、展示場も兼ねて借りていた作業所の立ち退きを急に迫られたこと。移転先として貸倉庫か工場を探していたのですが、なぜか不動産屋さんからのFAXに土地の案内が入っていました。場所は本社ビルのすぐ側で30年間の借地権。
 当時社長は71歳でしたが、101歳まで使えるなと思い、躊躇なく買付証明書を提出したそうです。
 いつか木造のビルを建てたいという夢もあり、導かれるように建築を決意しました。ただ、建築費用のほとんどを銀行借入に頼ることになります。返済期間は20年。建物が完成し返済の始まるのが74才。今のところはっきりした後継者もいません。借入を完済する頃には果たして何歳なのか…?
 しかし、社長は、その年齢まで「はたらける」ことが嬉しくて仕方ないとのこと。社長曰く、「60歳までは『働く』こと。60歳からはそれまでの経験を活かす『働き』を。70歳からの『はたらく』は、傍を楽にさせる為の『傍楽』。『はたらく』場があること、『はたらける』身体であることが幸せです。」とのこと。

 

住まいは住む人が命を預ける場所

 


p8努力中木造ビルトリミング こうして木造ビル建築に着手した伊藤社長でしたが、そこには様々な困難が待っていました。
 建築確認申請先の板橋区は木造ビルの受け付けは初めてで前例がない。まず建築確認に時間がかかりました。設置予定だったソーラーパネルの設置架台も木造では3階までしか想定しておらず設置ができない。地震保険の割引も、耐震性が優れていても事前書類の関係で割引を受けられない。
 困難が重なり心が折れそうなものですが、「スムーズにいかないのは当たり前。道は次に来る人の為に拓くものだ。」と社長。
 建物は住む人が命を預ける場所。だから妥協してはいけない。自分が本当に使いたいもの、命にいいものを使わなければならない。生きているとは即ち呼吸すること。つまり建物そのものが呼吸している必要があるのです。「本当の“高級住宅”とは、生命を護る“呼吸住宅”なんですよ。」と社長はおっしゃいます。

 

木造ビルに託した想い

 

 社長の目的は自社ビルの竣工そのものではありません。今でも愛工房を通じて、たくさんの人との繋がりがあります。その人たちは皆、環境を真剣に考え、命を大切にしている人たちです。こういった人たちに何かを残したい、絆を大切にしたい、この想いが社長を自社ビル建設へと駆り立てたのです。
 ビルの建設に使用した木材は、主に尾鷲・熊野地方の杉・桧です。尾鷲にある畦地製作所に設置した「愛工房」で乾燥させて、これを構造体の一部と内外装の仕上げに使用しました。建具・家具は、高島平の研究所に設置されている自社の「愛工房」で乾燥させた奥多摩材や西川材で製作されています。床や天井は、同じく自社で乾燥させた北海道産のトドマツが用いられています。
 4階に使われている木材は宮城県南三陸町の杉を使用しています。南三陸町の丸平木材株式会社は東日本大震災で全てを流され、復興を期して愛工房を2基設置。そこで乾燥された南三陸の復興杉が床・壁・天井の全てとカウンターに使われています。
 ビルの建築にあたり社長は施工業者を地元の工務店に依頼しました。今、町の大工さんはゼネコンの下請けが主になっているところもあり、せっかくの技術を活かす場がありません。木造ビル、木造住宅の建設を通して、少しでも地域を活性化できれば、というのが社長の想いです。

 

 p6努力中 木造ビル室内

 

乾燥機もそこから生まれる木材もすべて自分の子供。

 

 「自分には子供がいないが、この木造ビルは息子と同じ。そして今まで作り出し設置してきた乾燥機は娘。設置先に嫁いだ娘はたくさんの生きた木材を生み出し、住む人の幸せに役立っている。全国にたくさんの子供達がいて自分は幸せだ。」と社長。
 ビルが完成して4ヶ月。ビルの一部は社長の居宅になる予定だったのですが、ひっきりなしに全国から見学者が訪れ、引越しどころではないそうです。絆を大切にする社長は、自分のことは二の次です。自分が建てたこのビルを多くの人に伝えたい、それを実践しています。「引越しはいつになるのかなぁ。」と、笑顔でおっしゃっていました。

ライン

 実際にお邪魔してみると、杉の放つ命が感じられる建物です。都心のビル内にあって、まるで森林浴をしているかのような錯覚に陥ります。
 取材しながらも、緊張していた体が緩んで、呼吸が深くなり、ゆったりとした気持ちになっていくのが実感できました。

(柳原康太)