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第一経理ニュース

随想

いわき市で考える

 

スタビライザー株式会社
代表取締役 阿部 敏夫

 この夏、所属する経営者団体の広報部は一泊研修を福島県いわき市に決めた。普段例会に馴染まない基本問題や大きなテーマを議論するために恒例にしている。

草野心平記念館の内部

草野心平記念館の内部

 車二台での遠征。初日、地もと、いわき市出身の詩人草野心平を顕彰する、いわき市立「草野心平記念文学館」を見学。いい。内容が充実しているのに加えロケーションも素晴らしい。この人の詩と言えば誰でもが想い出すのは「蛙」の詩だろう。
 じつは望外の喜びもあった。先輩の猪狩洋さんのご父君で農民詩人として著名な「猪狩満直」氏の業績が立派な資料にまとめられて、この文学館の企画展図録になっていたことである。洋氏からいただいた満直さんの詩集「移住民」と「猪狩満直研究」の二冊は深く心に沈潜して努力を呼びかけてくる。
 こゝでの喜びはもう一つあった。交流のある現役の詩人、原田道子氏の作品が、展示してある詩誌「鮫」の冒頭に見つかったことである。
 草野心平、猪狩満直、原田道子と三人の詩人が広げてきた短詩形文学の世界とは時代背景をどのような形で表現し、心に写しだそうとしているのだろうか。それは一見爽やかにみえて心に重い。

 昨日の晴れやかさとかわって二日目の行程は苦渋に満ちたものになる。
 車は無人の浪江町を走る。立ち入り禁止の柵で覆われた道路の向こうに人気の無い人家が立ち並ぶ。所々に警備の人達が居て睨むように、こちらを見ている。原発の事故は人間を住居から追い出したのだ。国内原発54基の中では安全性が高いと言われていた東京電力、福島第一原発は悲惨な結果をさらけ出して国民に今後の判断を迫る。
 ゴーストタウンとは、このような町並みを言うのだろうか。窓を開けずに通り過ぎた無言の人家に人の声が戻るのはいつのことだろう。
 車はやがて小名浜に入る。海岸沿いのこの街も又、何も無くてトラクターが忙しく動き廻っている。
 津波が奪っていった残骸を整地し堤防を高くしている。

p11-無人の浪江町

無人の浪江町                       小名浜の復旧工事


 人家を跡形も無く攫っていった津波と人災としか言いようのない原発事故とを考えるとき、思考を何処まで先鋭化させて安全をたぐり寄せればいゝのだろうか。失敗を批判するのは易しい。問題は自分の頭で考えることである。
 独自の視点が形を明確にするのは、物をみる角度だろうか。それは現像論を超えて大事な点を見落としていないかだろうか。
 福島は二度死んだ。
 一度目は戊辰戦争の時、会津戦争は内戦のなかでも最も激しい総力戦だった。
 そして3・11の東日本大震災。相手は突然やってきて、被害だけを残して去っていった。福島はムザムザと負けるわけがない。
 この度の一泊研修は根源からの思索を迫って心を駆けめぐる。