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第一経理ニュース

随想

未払い残業代をめぐる問題

 

弁護士法人パートナーズ法律事務所
弁護士 原 和良

 

1 今年は、未払いの残業代をめぐるトラブル、労働審判などの相談、依頼が多い年でした。会社を起業したとき、経営者も従業員も最初は、会社を潰さないために時間を忘れて必死に働きます。数年経つ中で、社内で人間関係のあつれきや個々人の諸事情から退職する従業員もでてきます。やっと軌道になった時期に、すでにやめた従業員の代理人弁護士から会社に未払いの残業代請求の内容証明郵便が届きます。慌てて、事務所に社長から相談に来るというのが典型的な相談パターンです。

2 社長は飼い犬に手を噛まれた気分。あんなに無理を聞いてやっていたのに、ボーナスも借金して出してあげたのに、という悔しい思いから、徹底的に争いたいという相談になります。残業代請求は、労働基準法で2年の時効が定められているので、通常さかのぼって支払い義務が発生するのは退職前の2年間分の残業代です。これが、ばかになりません。200万円、300万円になることもしばしばあり、数名の小規模会社では一年分の利益が吹っ飛ぶこともあります。ある会社では、今年やっと創業以来利益が出たので、はじめてのボーナス支給を検討していたところ、労働審判の呼び出し状が裁判所から届きました。

3 労働者の中には管理監督者といって、残業代の支払いが免除される労働者の規定があります(労働基準法第41条3号)。
 多くの経営者は、管理監督者と管理職を混同しています。管理監督者としていえるためには、行政・裁判実務上、①事業主の経営に関する決定に参画し、労務管理に関する指揮監督権限を認められていること、②自己の出退勤の自由をはじめとする労働時間について裁量権を有していること、③一般の従業員に比しその地位と権限にふさわしい賃金(基本給・手当・賞与)上の処遇を与えられていること、という厳しい条件をクリアしなければなりません。マクドナルドの店長は、管理監督者ではないという東京地裁の判決は有名です。管理職と位置付けていても、またどんな肩書をつけていようとも、裁判所は、①②③の実態を備えているかどうかで、管理監督者か否かを判断します。
 残念なことに法律事務所に経営者が相談に来た時には、もはや手遅れ、というケースも少なくありません。日頃から労働時間の適正な管理を行う、無用な残業代支払いが発生しないように、例えば繁閑期が定期的に生じる事業所では、変形労働時間制度、専門業務・企画業務を遂行する労働者に関しては、裁量労働制を導入するなど就業規則の改定等で事前に対応できる問題もあります。

p114 ともあれ、突然の未払い残業代請求で会社の利益を瞬く間に失うことは、中小企業にとって死活問題であり経営者は疲弊し、職場の士気は大きく後退します。
 これらの例を他山の石として、自社の労働時間管理のあり方、就業規則の定め方を、再点検することも経営にとっては大事なことです。