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第一経理ニュース

随想

東京都を歩く2

 

スタビライザー株式会社
代表取締役 阿部 敏夫

 

 知らない所を歩くのは楽しい。それも「おばあちゃんの原宿」と言われて、度たびテレビなどで採りあげられている、あの巣鴨地蔵通り商店街である。
 友人の植松信保さんから電話があり大正大学のレストランを一緒に見て欲しいと言う。
 小振りの出版記念パーティに、いかがなものかとのこと。二つ返事で3月10日に巣鴨駅の改札口で待ち合わせた。実は記憶の片隅に六義園のライトアップの件が頭をよぎった。確か梅の花を照らしていた筈だ。駅を起点に南の方には国道17号線を歩いたことがある。六義園にも何度か、行ったっけ。こちらは後にして北の方へと勇躍歩き始めた。

p11-ここがとげぬき地蔵

ここがとげぬき地蔵

二人とも年齢(とし)の割には急ぎ足である。ほどなく道路を横断する「巣鴨地蔵通り商店街」の案内板があり、すぐ目的地に到着したのだと解る。それにしても江戸五街道の一つ中山道とはいえ道幅が広い。堂々たる太さである。
 旧道が楽しいのは街並の古さにもよる。この商店街、入ってすぐ左側に眞性寺がある。夕暮れ時のせいか客足もまばらでさすが江戸六地蔵尊のひとつ、偉厳は、たいしたものである。

  しら露もこぼれぬ萩のうねり哉

p11-右側に芭蕉の句碑があります

右側に芭蕉の句碑があります

 ここには芭蕉の句碑もあって江戸時代からの由緒を証明している。
 それでも、この街道を有名にしているのはとげぬき地蔵(高岩寺)だろう。けがも病気も、それなりの信心に期待してのことだ。高齢者は今でもご利益を願って疑心なく拝む。
 医者や薬を求める前に心に期するものがあるのは人生の厚みのせいだろうか。科学的ではなくとも大事にしたい風習と言ってよい。
 この通り、結構、長いのである。大きな店や現代風のデザインには距離感がある。それが人気の秘密か。
 今どき珍しい小振りの洋品店が目につく。そう言えばこの界隈を舞台にした小説があった筈。池波正太郎の鬼平犯科帳だ。長谷川平蔵を主役に江戸後期の火付盗賊改役が縦横無尽の活躍をする時代小説だ。帰宅後あわてて本棚を探って十冊程、開いてみたのだが題名が見つからない。
 この商店街を通り抜けると都電荒川線をまたぐことになる。華やかな雰囲気がガラッと変わって地味な感じの商店街だ。
 そして間もなく大正大学が右手に見えてきた。お目当てのレストランは5号館の8階にあった。
 ここからの眺めがいい。一目で気に入った。多分植松さんはこれを見せたかったのだ。「鴨台(おうだい)食堂」と、いかにも学食風の名前なのだが、しつらえはスマートなのだ。予約の女性の名刺をみるとプリンスホテルが経営しているのだった。納得して失礼をした。この大学には続きがあって面識のある木元先生に会っていこうと植松さんは言う。
 間もなく会議がある木元修一先生と挨拶を交わして、フトいただいた名刺は副学長。忙しい筈である。
 大学に未練を残しながらバスで六義園に向う。駒込駅からなら、すぐなのだが裏をひと廻りして正門に着く。懸念した通り、しだれ桜のライトアップは三月十七日からの張り紙。
 一気に疲労が押し寄せる。ママよとばかり駅前の居酒屋で生ビールで乾杯。夜は静かに更けていく。
 この一杯のために今日があったのだと歩数計を見れば一万四千歩を超えている。これでいいのだ、憧れの「巣鴨地蔵通り商店街」。

p11-これぞ、おばあちゃんの原宿通り

これぞ、おばあちゃんの原宿通り