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第一経理ニュース

ミヂカな法律

役員登記から名前を外したいけど、外せない?

 

  「名前だけで良いから…。」と言われ、会社経営に関与しない名義だけの取締役(名目的取締役)への就任を要請され、それに応じているというケースがたまに見受けられます。
 たとえ名前だけでも、取締役として登記されている以上は、「経営にタッチしていない。」「対価や報酬を貰っていない。」
 といっても、取締役としての責任を負わされる可能性は否定できません。

 そこで、役員として名前を貸している方からは、会社の信用不安等を聞きつけたとして、「一刻も早く役員登記から名前を抜いて欲しい。」といった相談や依頼をいただくことがございます。

 この場合、任期途中であっても、いつでも辞任はできますので、会社に対し、すみやかに辞任届を提出し、役員を辞めることが必要です。万が一、その会社と「受け取った」「受け取らない」ということで揉める可能性や不安がありましたら、内容証明郵便等で辞任通知することを、検討した方が良い場合もあります。ただ、辞任しても、役員登記に名前が残っている限り、第三者に対して自分が辞任したことを主張できませんので、速やかに辞任した旨を登記しなければなりません。

 ですが、ここで2つの問題に直面するケースがあります。

(1) 辞任によって法律又は定款に定める定数に欠員が出てしまうと、定数補充が図られるまで辞任の登記はできません。(権利義務承継取締役の問題)
(2) 会社の登記は、代表取締役(会社代表印届出者)から申請する必要があるため、代表取締役の協力が得られないと、登記はできません。(申請権限の問題)

 

 つまり、たとえ辞任しても、定数に欠員が生じる場合は、会社が株主総会で後任を選任するまでは、権利義務承継取締役として役員の地位が継続するため、辞任の登記はできません。また、代表取締役からの登記申請でない限り、適法な登記申請ではないため、却下されてしまいます。
 実際の相談事例では、登記費用の負担で揉めたり、会社との関係が険悪で登記手続きをしてくれないというケースや、そもそも代表取締役と連絡を取ることができないケースもございました。

 では、代表取締役と連絡が取れない、会社が協力しない場合、どうしたらよいか?

(1) 定数不足になるにもかかわらず、速やかに後任の取締役を選任しない場合は、裁判所に仮取締役の選任の申立てをすることで、定数不足の解消を図ることになります。
(2) 会社(代表取締役)が登記手続きをしない場合は、辞任による役員変更登記手続請求訴訟を起こし、勝訴判決を得て、自ら登記申請することになります。

 

 このように、登記の前提として、裁判所への申立や訴訟手続きが必要となり、別途、時間と費用を要することになります。

 法律上、辞任はいつでもできるからと言って、「いざとなればすぐ辞めれば良い。」と思われがちですが、実際に役員登記から名前を抜く場合に、面倒な事態に陥る可能性もございますので、十分お気をつけください。

  司法書士 古川 博昭