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第一経理ニュース

随想

人間は、自然の一部であることを忘れてはならない

 

 

 弁護士法人パートナーズ法律事務所
弁護士 原 和良

 

1 人類は、この宇宙の中で、約700万年前に2足歩行を初めて以来、様々な道具を発明して、自然に働きかけ自然を支配する知恵を授けられ、今のところこの地球上で最も発達した生物としての地位を与えられている。
 しかし、2011年3月11日の東北地方大震災とそれに引き続く福島第一原子力発電所の事故と放射能被害、そして最近の熊本を中心とする震災被害を見るにつけ、自然を侮ってはいけない、自然を支配できるなどという傲慢な思想をもってはならない、われわれ人類もまた自然の一部なのであるという自覚と自戒を持たなければならないという思いを強くする。

 

2 原発と司法

(1) これまで、日本の司法は、国策である原発問題について、国策に司法判断を下すことに極めて消極的であった。
  1992年の伊方原発差止め訴訟の最高裁判決は、原子力発電所の危険性の判断は、基本的に専門家にゆだねられるべきであり、裁判所は、「原子力委員会若しくは原子炉安全専門審査会の調査審議及び判断の過程に看過し難い過誤、欠落」があるかのプロセスを外形的に審査する、という姿勢をしめした。

(2) これに対し、3・11以降の司法判断は、全体としての流れは基本的に変わっていないものの、原発事故を招来した司法の責任を自覚した、画期的な判断がいくつか散見される。
 福井地裁の大飯原発3、4号機運転差止請求事件判決(2014年5月21日)では、「本件訴訟においては、本件原発において、かような事態を招く危険性が、万が一にでもあるのかが、判断の対象とされるべきであり、福島原発事故の後において、この判断を避けることは、裁判所に課された重要な責務を放棄するに等しいものと考えられる。」と判事している(樋口英明裁判官)。
 また、大津地裁の原発再稼働禁止仮処分申立事件(2016年3月9日決定)では、「本件各原発については、債権者らの人格権が侵害されるおそれが高いにも関わらず、その安全性が確保されていることについて、債務者は主張及び疎明を尽くしていない。」として差止め仮処分を認めた(山本義彦裁判長)。

 

3 3・11が私たちに示したものは何か

  安全性に対する判断は、「専門家」でもわからない、少なくとも「専門家」の判断は不完全なものであるということを事実で示した。
 そうであれば、民主主義の社会にあっては、安全と認めるかどうかは、主権者である国民の判断にゆだねられるべきであるという結論になろう。
 人間は、自然の一部であり、自然を支配できるなどと考えてはいけない。判断を迫られているのは、私たち一人一人だ。

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