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第一経理ニュース

税制改正

インボイス導入は中小企業の経営をピンチに
   
臨時国会で消費税の延長が審議される

税理士 長谷川 元彦

 

 6月1日安倍首相は、「消費税率引上げの2年半延期」を表明しました。しかし、9月の臨時国会で、改めて消費税法の改正法を成立させないと、消費税引上げの延期はできません。8月24日に延期の法案が閣議決定されました。引上げのスケジュールをそっくり2年半延期するものです。予定では平成31年10月から10%へ引上げ、軽減税率の適用、区分記載請求書の適用、平成35年10月から、適格請求書(インボイス)の導入を予定しています。
 今年の税制改正で十分な議論がされたと思われない、インボイスについて問題点を検討してみます。

 


 平成35年10月以降に、「適格請求書」というインボイスの導入を予定しています。「適格請求書」とは、税務署の登録(許可)を受けた事業者が、その与えられた登録番号を記載した請求書で、控えの保存も義務付けられ、滞納が続くと取り消される可能性もあるものです。登録番号の記載された請求書等でしか、仕入れ税額控除を原則できない制度になり、登録番号の有無が取引の際に重要な事項になります。
 実際の取引でどういうことが起こるのか検討してみます。
 

外注先へ600万円の支払いをする場合、税率は引上げ後の10%というケース


相手が課税事業者で600万円について、「適格請求書」をもらうことができる場合
・外注費として600万円の支払をする(相手から適格請求書の交付を受ける)
・支払う事業者は600万円×100/110×10%=545,454円を消費税の申告で控除できる。
・結果として外注費の600万円の支払いで済むことになる。

相手が免税事業者の場合や「適格請求書」の保存がなかった場合
・外注費として600万円の支払をする。これは①と同じ。
・600万円を支払っても消費税の計算では「仕入税額控除」ができない。その結果 税込売上高×100/110×10%を税務署へ支払うことになる。

③課税事業者からの外注費と同じ利益を確保しようとするのであれば、10%の値引きを要求しなければならない。

 

同じ取引を受取側(外注先)から考えてみる


1)課税事業者を選択する場合
・上記①の場合、免税事業者では、「適格請求書」を発行できないので、課税事業者を選択しさらに登録番号を税務署へ届出て番号をもらうことになる。そして課税事業者として600万円×100/110×10%−仕入税額、で計算される税額の納税となる。

2)免税事業者であり続けた場合
・上記②のように発注者側が、発注金額を変えないのであれば、納税が発生しないので利益は変わらないことになる。
・上記③のように値引きを要求され、受け入れたなら、売上は50万円ダウンし、生活が成り立たないことになる。

 

取引先を選別できるのか


 上記検討したように発注元の事業者は、免税事業者と取引をすれば納税額が増えるということを示しています。結果的に、免税事業者を取引から排除する方向に進むことになります。
 中小事業者の多くは免税事業者と取引をしています。そのすべてを課税事業者にすることは、実際の取引を考えた場合不可能です。配達を個人事業者に委託している事業者、建設業では現場単位で個人の外注を使っているケースも多いです。出版社も原稿料を支払う著者の中で、消費税の課税事業者はどのくらいいるでしょうか。免税事業者が廃業に追い込まれるだけでなく、免税事業者と取引せざる得ない中小事業者にとっても死活問題になるのではないでしょうか。