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第一経理ニュース

会計事務所交流会 特別講演(講演抜粋)

人を生かし、人の幸せのための経営

 

p2-講師

 

 

 

講師吉原 毅 (よしわら つよし) 氏 
   城南信用金庫 相談役 

 

【講師プロフィール】
 1955年東京生まれ。1977年慶應義塾大学経済学部卒業後、城南信用金庫入職。2010年理事長に就任。東北大震災以降、被災地に対する支援活動、地域貢献活動に注力。特に、福島第一原発事故の翌月1日より「原発に頼らない安心できる社会へ」を宣言し、講演やシンポジウムを実施するとともに、金融を通じて自然エネルギーや省エネルギーを推進。また、脱原発に関する情報を発信するために城南総合研究所を設立。原発再稼働反対、原発即時ゼロに積極果敢に取り組む。2015年6月理事長退任、相談役として現在に至る。

 

 

お金の弊害    

 

p2-風景2 社会がどうあって、その中で企業経営がどうあるべきか。お金とは。数字とは何なのか。
 「お金」には、交換する手段、価値を貯め込む機能、価値尺度機能の3つの機能がありますが、「お金」とはエゴイズムの幻想、結晶です。私は「お金」こそ自意識の塊、人類の生み出した最大の妄想だと思います。人類の歴史はこの「お金」との戦いの歴史です。
 2500年前、哲学者ソクラテスは「世の中にとって、善なるものは、悪なるものは何か、を考えることが大事だ」と言いましたが、お金と自由が関心の中心になり損得ばかり考える。良識ある話し合いではなく、数の暴力、権力によって人を支配する。権力者が独裁者になってしまう。つまり、民主主義を放っておくと最後は独裁政治になる。まさに今の日本や世界と同じではないでしょうか。
 世の中が市場経済になり資本主義経済となっていきました。「お金」によってモノをやり取りする社会です。「お金をあげるから、言う事を聞きなさい」人間の商品化、奴隷化の始まりです。釈迦、ソクラテス、孔子たちが、道徳、倫理、宗教を語りました。お金の弊害を何とか解決したいという教えです。その後も「お金」は猛威をふるいますが、文化、政治、宗教、法律、共同体をつくることで、何とか暴走しないようにしてきました。
 「自由」を私は好きではありません。「自由」という近代主義は、現代に至るまで麻薬のように人間の頭を狂わせています。スペインの哲学者ホセ・オルテガが著書『大衆の反逆』で、「今の世の中、大衆は文句ばかり言うが、自分から何かをしようともせず、自分の利益しか考えない。何が正しいかを言わず、価値観は自由だと言う」と。価値観は自由、それは間違いです。コミュニケーションを取らず、仲間はいなくなる。後に残るのは、刑罰と損得、飴と鞭です。官庁、企業、学校と、あらゆるところで損得と恐怖感で人をコントロールする。近代社会の大きな病気です。

 

協同組合の始まり     

 

 「お金」が社会の秩序を飛び出してしまったことが近代社会の大きな問題です。それに警鐘を鳴らしたのがロバート・オーエンです。ロバート・オーエンはマンチェスター最大の紡績工場をわずか20代で経営していた優秀な経営者でした。当時のイギリスでは、自分の金を少しでも増やすことが目的の資本家ばかりの中で、オーエンは従業員は仲間だと、社宅を整備し、子どもたちに上層教育を受けさせ、病院や購買所もつくり、首切りもしなかった。オーエンの気持ちを受けて、従業員たちも高品質の糸を作るための工夫をした。人を大切にするこのコミュニティ経営は、資本主義はこうあるべきだと注目されました。これが協同組合運動の始まりです。1844年、ロッチデール・パイオニアという世界最初の生活協同組合が誕生しました。
 我々は資本主義や上場株式会社制度は経済の最高の形態であると信じてきました。しかし、それらは危ないものだというのができた当時からの常識でした。その常識が失われて、株主は株が上がるかどうかで投資します。損得を考えている人たちの利益調整の手段としてマーケットがあるので、そのマーケットでつながった株式市場、労働市場、消費者市場が反社会的な方向になっていき、道徳観、倫理観がなくなるのは当たり前です。

 

正しい経営とは         

 

p2-風景3 これに対して異を唱えたのは経営学の人たちです。ピーター・ドラッカーは「会社は株主の言うことばかり聞いていてはいけない。ステイクホルダー(利害関係者)全員の幸せを考えるのが経営者である」と言いました。経営の神様、松下幸之助は「お金を目的として経営する人は必ず視野狭窄になる。近視眼的になる」と。アップルの創始者スティーブ・ジョブスは「お金を目的として経営した人で、成功した人を私は見たことがない」と。ドラッカーの弟子である『ビジョナリーカンパニー』の著者ジェームス・コリンズは「コーポレートカルチャー(企業文化)は理念、理想、方向性が大事で、それがない会社はうまくいくわけがない」と。カナダの経営学者ヘンリー・ミンツバーグが、「会社はコミュニティが大事である。会社は人々の協力、話し合いにより気持ちが一つになりうまくいくのであり、損得、飴と鞭で操縦してうまくいくわけがない」と。ハーバード・ビジネススクールのマイケル・ポーターが、「お客と社会、従業員を含めて皆が共有できる共通価値(CSV)を増やしていくことが経営の目的である。その一部が会社の利益となる」と言っています。
 中小企業の社長は、お客様を大事にして、仕入れ先を大事にして、商売できるのは地域住民の方々のおかげだと奉仕を忘れない。私たちのお客様である中小企業の経営者は着実に発展して、健全に経営をやっているハートのある方々です。そういう会社のほうが発展し続いているのです。
 見えない資産、見えない収入、見えない費用があるのです。例えば、友情資産、信頼資産などといったもの。表面上のバランスシート、損益計算書を見るだけでなく、その裏にあるもの。そして将来に向かって、どういう形で信頼資産などを積み立てていく力があるのか。そういうものが大事です。

 

城南信用金庫のミッション   

 

 城南信用金庫は、「お金の弊害」を是正するための協同組合の経営です。協同組合の経営ということは、お客様である中小企業の方々と同じ気持ちです。正当な人類の思想を受け継いだ中小企業や個人のお客様と共に、現代社会が陥っている孤独、いじめ、貧富の格差、助け合いやコミュニケーションのない世の中、原理主義、強権的な中央政治といったものをもうやめて、人間性を回復していく。これが私たち協同組合の本来の形です。
 会社は社会に貢献するためにあるのです。東京通信工業(現ソニー)の初期の定款には「真面目な技術者が思う存分力を発揮できる愉快な理想工場をつくります。これが我々の目的である」とありました。昔は、官僚も経営者も技術者も働く人たちも大きな一つの目的、志とビジョンを持ってチームワークで取り組んだので、アメリカとの経済競争においてことごとく勝った。でも今は勝てない。なぜか。志を失ったからです。そこに大きな原因があると思っています。我が社は世界を変えるためにあるのだと社長が言い続けなければいけない。そして社長はユーモアを解さなければいけない。大きな志と、皆を思いやるユーモア、馬鹿になれるか。そういうことがある会社が伸びていくのではないかと思います。
 私たち金融機関も皆様の夢の実現のお手伝いをする、困った人を助けることが最大の仕事だと思っています。景気変動の中で、資金繰りが厳しい、設備投資をしないと大きな仕事ができないといったときに、金融機関としてお手伝いができればこんな嬉しいことはありません。お客様から「ありがとう」と言っていただけるときに、やりがいと喜びを感じます。ゼロ金利の厳しい中で、地銀はどんどん合併していますが、うちがなんとかやっていけるのもお客様のお助けのおかげと思っております。

 

自然エネルギーで日本を元気に       

 

 私は原発ゼロ・自然エネルギー推進連盟(原自連)をつくり、会長になっています。自然エネルギーと原発、これはもう勝負あったのです。負けを認めようとしないのが、今の日本の政府、財界、マスコミ、原子力村です。世界では勝負がついています。世界に原発は400基あります。1基約100万KW(1GW)です。400GWの設備容量があるが半分の200GWしか動いていません。福島の原発事故が起こる前、自然エネルギーはわずか数分の1でした。ところがこの数年間で、太陽光と風力はそれぞれで原発を抜きました。設備容量が2つ合わせると800GWを超えています。
 過疎化の地域の方々が電力事業を行うことで地域の活性化が起きます。城南信用金庫としては、今年100億円の資金を使って応援しています。原発被害にあった福島県富岡地区、飯舘村、九州、青森県で各地域の信用金庫や地方銀行も巻き込んで進めています。宮城県、新潟県でも予定があります。自然エネルギーが増えていくと日本は大発展します。太陽光はどんなに小規模からでも参入できて、コストが安くて儲かる産業なのです。固定価格買取制度をつくったときは自然エネルギー優先でした。これに恐れをなして、原発と火力発電優先と法律を変えてしまった。今は接続拒否です。唯一できるのが50KW位の小規模なものはつなげられます。これは非常に残念なことです。なんとか変えていかなければならないと考えています。
 今私たちがやっているのはソーラーシェアリングです。日本には農地が460万haあります。この農地の上3mの高さに幅50cmの細長いパネルを間を3分の2空けながら並べて太陽光で発電する装置を作る。上で発電して下で作物を作る。このソーラーシェアリングをやると、農家の年収が10倍位になります。日本が地方からどんどん豊かになり、それに対して中小企業の方々にも社会的責任投資としての協力や事業をやっていただきたいと思っています。
 世界は自然エネルギーに向かっています。もし日本が遅れをとれば、日本のエネルギーコスト構造は世界で最も高くなる。しかも原発という無限大なる社会的コストが子孫に降りかかります。それだけではなく、また原発事故が起きたら日本の国土は失われ、世界に大変な迷惑をかけることになります。お金の弊害によって社会に閉塞感を招いている中で、みんなで取り組めば儲かるし、尚且つ世界は平和になり、明るくなって、やりがいのある夢のある大きな事業が手を取り合ってできると思います。

(平成29年6月6日に行われました会計事務所交流会でのご講演です。)

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