• 【東京・埼玉で税理士事務所をお探しの方へ。第一経理は中小企業の皆様に、身近でかけがえのないコンサルタントとして60年超の実績があります。】

第一経理ニュース

我が社の原点

未来につながる自然エネルギーを

株式会社 エコテック 代表取締役 林 敏秋 氏

聞き手 : 埼玉事務所 新美 康弘

 今月は、今話題の太陽光発電を、15年前から扱っている株式会社エコテックにお伺いして、お話を聞きました。

――創業までの経緯を聞かせてください。

社長 : 実は私が創業したわけではないんです。始めた方はもういないのです。私たちはワーカーズコープという考え方で事業をやっていまして、労働者生産協同組合といいます。もともとは労働組合運動の中で争議などを経験してきたメンバーが中心で始めました。イタリアやスペインなどで発達していたやり方なのですが、日本では法律がまだなかったものですから、株式会社で発足させました。
 17年前、ドラム型洗濯機を開発・製造するのが事業の出発でした。当時、合成洗剤の環境破壊が社会問題になっていました。その運動の一つとして石けん対応の洗濯機を、生協や主婦の方と一緒に研究をしながら、開発したのです。当初はメーカーに掛け合いに行きましたが、「市場がない」とにべもありません。自分たちは技術者だったので、それなら会社を興そうということになりました。
 ところが製品の製造・開発には莫大な資本が必要でした。結果的にドラム式洗濯機は実現しませんでしたが、借金だけが残りました。
 環境関係の装置を作って売ったりしていましたが、社会的に役に立つもの、利潤を第一に追求するのではないもの、私達が「社会的有用性」と呼ぶものを大事にする事業体としてやっていこうと考えました。
 94年に、太陽光発電の補助事業が始まりました。それ以前から技術的な素地がありましたし、原子力発電に頼らない、再生可能なエネルギーで環境的にも、社会的にも有用な事業であるということで、この事業を始めました。
 当初は関心の高い消費者や脱原発のグループと連携しながら事業が出発しました。

――ドラム式洗濯機が最初の事業だったというのには驚きました。

社長 : 今では、ドラム式は一般的になっています。当時は、大手のメーカーはすべて「作っても売れない」と言っていました。そうした意味では私たちは時代の10年先を行っていたのではと思っています。事業の成功には結びつかないのですが。(笑)

――太陽光発電についてお聞かせください。

社長 : 太陽光発電と言いますと、どのようなイメージでしょうか?
 今では一般的になっていますが、最初の頃は太陽熱温水器との区別ができず、発電しているこ事が理解してもらえませんでした。
 始めた当初は経験者もいませんし、手探り状態で、メーカーの施工基準などもあいまいで、自分たちで工夫しながら、屋根に取付けていました。よく工事をしていると「うちにもついているよ」と言われました。それは太陽熱温水器のことが多かったです。混同されていたように思います。94年には全国で550件程度の施工実績だったのでやむをえません。そのうちの約2%ぐらいをは当社で施工しました。

――御社のパンフレットを見ますと、太陽光発電だけでなく風力や水力などのラインナップもあります。

社長 : 自然エネルギーは太陽光発電だけではありません。風力や小水力なども今後重要になってきます。自然エネルギー全般に対応できる企業として展開していきたいと考えています。

――この分野での老舗にあたる御社ではどのように自分たちの事業をみていますか。

社長 : 私達の目的は、労働者の協働で雇用を生み出すことなのですが、他方で環境に負荷をかけないということも考えてやっています。
 例えばオール電化住宅が今の流行りですが、私たちの考えでは、オール電化は環境には逆に負荷を与えていると判断しています。
 電気というのは非常に便利なエネルギーですが、発電所で投入したエネルギーは6割ぐらいが熱になり、送電ロスも5%程あって手元に届くのは3~4割程度です。そうした意味では電気は非常に「高価な」エネルギーなのです。その電気をさらに家で熱に変えて使うわけですから、今までガスで供給されていたものが電気に置き換わるというのは、環境には相当負荷をかけていることになります。電気はためておくことができないので、夜間電力を使うことで、電力使用のバランスは取れるかもしれませんが、結果として消費量は増え、二酸化炭素を出すことにつながります。また原子力発電に依存することになり、放射性廃棄物の廃棄の問題なども生じます。
 太陽光発電をやっている全国の業者は、どこもオール電化を進めています。わが社はその中で稀にみる「オール電化」をお勧めしない会社なのです。(笑)
 メーカーの人には「時代に遅れますよ」と言われますが、私たちは逆に時代に先行しているのだと思っています。もちろんお客さんから「オール電化をつけてほしい」という要望がある場合には、つけていますが。

――とてもユニークですね。

社長 : その発想の根幹には、社会的有用性があるのだと思います。自分たちの事業が社会やそこで暮らす市民の中で、役に立っているのかという視点を持ち続けたいと思っています。もちろん事業なので利益が伴わないと現実にはやっていけません。ですが、そうした視点を持っていることが、他の太陽光発電の業者との差別化になっていると思っています。
 今は、私たちは「市民事業」と言っていますが、市民と一緒に、NPOや地域とも連携しながら、事業を展開していきたいと考えています。
 ドラム式洗濯機の時のように、10年後には、時代の最先端を行っていたと言えるようになればよいと思います。

――太陽光発電が事業の中心ですが、どのように営業されてきたのですか。

社長 : 最近は太陽光発電で電力の買取もできるようになってきましたが、まだ減価償却には12~15年程度かかります。金額も百万円単位です。
 ですが、私たちの得意先というのは、環境問題に関心のある層が中心だったと思います。太陽光発電でどのくらい自宅の電力がお得になるかということよりも、損になっても環境や子孫のため、社会のために何かやりたいという方たちです。そうした想いを受けとめながらやってきています。
 今は、その段階からさらに一歩広がりはじめています。固定価格買取制度がヨーロッパで成功したのを受け、補助金制度の復活とともに買取制度が整備され出しています。業界自体も少しかわってきています。

――労働者の仕事作りという運動の中で「株式会社」を選ばれたということでしたが、組織運営上のご苦労はなかったのですか。

社長 : 普通の会社は、社長が会社を起業して大きくしていくのだと思いますが、わが社では、社長も選挙で選んでいます。働いているみんなが株主で、株主の権利は皆平等なんです。社長になるには、経験や責任なども問われるので、誰でもやれるというわけではありません。あまり積極的にやりたいという人はいないですよね。

――事業の原点や経営の中で苦労されたことなどはありませんか。

社長 : 私どものような労働者の協働を進めている団体は他にもあります。サービス業を事業にしているところが多いと思います。ただ、私たちは技術者が中心だったものですから、こうした会社になりました。
 実は工業系のワーカーズコープは、技術・経営能力・資本の問題で成立しないだろうと言われてきたんです。そうした意味では15年間細々とですが、続けてこれたことは、我ながらすごいことだと思います。私自身こんなに続くとは思ってなかったですから。
 ただ、今後この事業を次の世代に引き継いでいく仕事は大変なことだと考えています。15年前に始めた人たちを含めて高齢化しています。
 また、処遇の問題については、ワーカーズコープでやってきたが故にいろいろ悩んでいます。いま若い人たちは労働条件に大変敏感です。特に有給はとれるのかなどですね。ところが私たち創業時代から居るメンバーはそういうことには無頓着で、ある意味ワーカーホリック(仕事中毒)気味なので、そうした考え方になじめなかったりすることがあります。
 今後事業体のさらなる発展を目指す場合には、そうした問題は大きな課題になってくるのかなと思います。

――営業所を全国に展開されています。

社長 : 東海、関西、九州にスタッフを置いてやっています。各地域のNPOや市民活動団体と連携しながら事業展開しています。また、設計事務所や工務店の中には、すばらしい理念や志をもってやっている事業所がたくさんありますので、こうした理解ある企業ともつながりながら展開しています。
 ただ、いわゆる企業で言う「営業活動」らしいことは、ほとんどやれていません。それで注文をいただいているのでありがたい限りです。

――御社の強みはどこにあるのでしょう。

社長 : 地域との結びつきが強みだと思います。地域ごと、オフィスごとに個性を持って独自にやっています。また、15年前、他の業者に先駆けて始めているというメリットもあると思います。設計事務所では、技術力があり信頼できる太陽光発電の業者を求めていますので。
 産業用の太陽光発電が今、需要が大きくなっています。導入した企業としては、「わが社はこうして環境問題に対応しています」と宣伝できるわけです。こうした事業系の補助金は申請が結構複雑です。わが社では、書類作成が得意なので、この部門は今後も伸ばしていけるのではと思っています。
 地域との関係では、NPOと連携して、節電分を寄付してもらう「市民共同おひさま発電所」を保育園などの屋根に取り付けています。また、子どもたちにもわかるような表示盤をつけて、どのくらい発電しているか、エコになっているか理解できるようにしています。これは、子どもたちにも、保育士さんや保護者にも好評です。

――今後の事業展開をお聞かせください。

社長 : 次の世代の人を育てていきたいと思います。太陽電池については、今後も市場としては増加していくと思います。太陽電池は住宅に取付けるものなのに、インターネットでも買えるようになってきています。こうしたあり方は、将来必ずクレームとして顕在化すると思います。15年間の経験からもそう言えます。そうした事を考えた場合に、地域に根差した工務店・設計事務所と連携しながらやっていく事は大変重要です。事業の展開は着実にやっていきたいと思っています。
 太陽電池メーカーでは外資も入ってきています。太陽電池は20年使用しなければならない設備です。洗濯機などの生活家電とは根本的に違います。今はブームで伸びていますが、多くの業者が、クレームを含めた対応ができる業者として残っていけるのか疑問な部分があります。

――本日はありがとうございました。


(文責 新美康弘)