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第一経理ニュース

新春対談

「中小企業憲章が活きる社会へ……今中小企業に何が必要か」 

実感なき景気回復と言われた昨年。中小企業経営者にとっては先行きの見えない濃霧の中での羅針盤が欲しいのでは? そこで今年は昨年6月に閣議決定された中小企業憲章について、中小企業家同友会全国協議会の瓜田氏と弊社代表千葉との対談を企画しました。


中小企業家同友会全国協議会政策局長 瓜田 靖氏
第一経理グループ代表 千葉 秀蔵
聞き手 新美 康弘

 ――昨年6月18日に「中小企業憲章」が閣議決定されましたが、10年近く 制定運動をされてきた経緯と併せて、憲章についてお話いただけますか?

瓜田氏 : 憲章というと戦後間もなく制定された児童憲章があり、最近ではワーク・ライフ・バランス憲章などがあります。これらの「憲章」は、官民で会議体を作りそこでの合意で作成されたものです。今回の中小企業憲章は閣議決定された初めての憲章です。これは、政府の姿勢と政策理念を明確に示したという意味で意義があるものです。閣議決定は全閣僚が了承したということで全省庁が従う義務があるという行政上の最高の意思決定という位置づけになります。
 したがって、中小企業の問題は中小企業庁といった従来の縦割り行政の枠を超えた対応が期待できます。各省庁を横串で刺したような対応です。

――中小企業家同友会ではこの憲章の制定については、8年前から取り組んでいました。

瓜田氏 : 直接のきっかけはEUで「ヨーロッパ小企業憲章」が制定されたという情報を得たことです。2002年に愛知同友会がヨーロッパ視察をする中で、EU本部で小企業憲章についてレクチャーをしてもらいました。毎年各国の中小企業政策の進捗を、政策指針10項目をベンチマークにして、成果の確認をするなど実践的なものでした。また、「小企業はヨーロッパ経済の背骨である」という格調の高い理念にも感動しました。日本でもこうした方法と理念を確立することが必要だと思いました。
 一方で、当時は金融問題で、「金融アセスメント法」の制定の運動をしていました。中小企業と金融機関の関係を対等にしようという趣旨の制度です。結果として、リレーションシップバンキングや「金融検査マニュアル別冊・中小企業編」の策定など、部分的な改善はされてきていましたが、制定には至りませんでした。
 この経験から、単に金融問題とか、中小企業対策的な狭い政策の枠組みだけでは解決できないことを学びました。全体的視点に立った総合的な政策展開の視野から中小企業憲章の必要性の認識が広がってきたという背景があります。

――憲章の制定運動は大変だったと思いますが。

瓜田氏 : 2003年から憲章、中小企業振興基本条例を二本立てで運動してきました。憲章推進本部では、憲章は中小企業の存在意義が再確認できるという意見がある一方、目標が遠大であるがゆえに、あと何十年たてばできるのかといった意見もありました。相手のあることなので具体的なロードマップも作りようがありません。
 そうであっても、この憲章の考え方については、どなたも反対できない。どの政党の方でも、趣旨には賛成だと言います。そういう意味では大義はあるのだと確信していましたし、いつか制定されると思っていました。

――政権交代があったということは影響がありましたか。

瓜田氏 : 選挙前に、民主党がマニフェストに憲章を載せたということがありましたが、共産党、社民党、みんなの党なども総選挙時では公約に掲げていました。自民党の中でも自分の公約では取り入れると言った方もいました。

――EUでは小企業憲章が策定されて実際に活かされている状況のようですが。

瓜田氏 : ヨーロッパはアメリカを常に意識しています。EUにはリスボン戦略というものがあります。2010年までの10年の戦略ですが、ヨーロッパ経済をアメリカに負けない持続可能な経済にしていく戦略です。その戦略の一環としてヨーロッパ小企業憲章が制定され、中小企業が一番鍵になると宣言したのです。EUの加盟国は、15カ国から27カ国になりましたが、加盟国がすべて小企業憲章を締結しています。結果、憲章がヨーロッパ全体の中小企業政策の標準になって、新規加盟の国々の政策の底上げにも貢献しています。
 2008年には「中小企業議定書」を締結し、小企業憲章の内容実現の強化を図っています。

――日本を振り返ってみて、中小企業の現状をどのように見ていますか。

千葉 : 経団連が成長戦略2010年といってまとめています。企業の活性化なくしては雇用も豊かな国民生活も実現できないと、企業の国際競争力の強化を前面に押し出したものになっています。例えば法人税の実効税率を30%まで引き下げる、消費税を10%にするという戦略を掲げています。
 しかし、この間の状況を見ていると、大企業のためこみの問題が大きな問題なのです。1998年と2008年の対比でみると、社内留保が13兆円から18兆円へ、株主配当は4兆円から10兆円、法人税は11兆円から9兆円へ。
 法人税の負担は減っているが、その資金は内部留保と株主配当へまわっています。一方で労働者の賃金、下請け会社の単価は下がり続けている、まさに「実感なき経済成長」の原因がここにあります。これはこの10年変わっていない。民主党政権の政策も同じ歩調を取っています。
 このことから考えると、中小企業経営者にとっては、展望や先行きの見えない状況が続くと考えざるをえない状況です。

――具体的には。

千葉 : 第一経理の顧客の状況をみてみますと、2010年の9月申告以前1年でみると70%の顧客の売り上げが減少しています。顕著なのは建設業、製造業です。建設業などでは売り上げは10%減だが粗利益は50%ダウンといったことも珍しくはありません。

――そうした厳しい状況下の中で必要なことは何でしょうか。

千葉 : 中小企業の今の一番の悩みは仕事が減っていること、それと資金繰りです。資金の問題は国もかなり力をいれてやっています。貸してくれる、あるいはリスケジュールにも応じてくれるということはあります。しかし、借りたものは返さねばなりません。
 私は、お金を貸すことよりも仕事を出してくれと言いたい。例えば、自治体によってまちまちですが、住宅リフォームの助成をしている自治体があります。昨年8月末で32都道府県167自治体で実施しています。助成額は一件10万から30万円ほどです。
 秋田県ではその波及効果が500億円を超えていると報道されています。岩手県の宮古市では2397件の申請があり、24億円の経済波及効果を見込んでいるそうです。額は小さくても、中小企業の仕事確保という意味では、こうした助成制度のほうが効果的ではないのかと思います。こうした助成を受けるのは地域の中小建設業者であり、地域の経済の活性化にもつながっていくのです。

――中小企業憲章を私たちはどう活かしていったらよいのでしょうか。

瓜田氏 : 中小企業憲章の議論をする中で、仕事づくりを進めていく宣言としての位置づけを主張してきました。閣議決定された憲章の基本原則の3にこうあります。「創意工夫で、新しい市場を切り拓く中小企業の挑戦を促す」すなわち中小企業が仕事づくりをするための環境を作っていくことを支援すると述べられています。
 新しい仕事を作っていくことは、憲章の実践的な面だと思います。もちろん中小企業が自ら実践していくわけですが、その実現のための施策が必要であれば発言していく。地域では、中小企業振興基本条例といったものを根拠とした施策を提案していく。これは中小企業のためだけに必要なのではないのです。地域経済・社会を活性化させるために必要なのです。
 私は地方に行くことも多いのですが、関心が高いのは仕事づくりに関連したことです。例えば、官公需を地域のことをよく知っている中小企業に受注できるような仕組みをつくることに行政の姿勢を誘導していく。その際に、憲章や振興条例は役に立つと思います。

千葉 : 昨年、同友会の政策要望の申し入れを、北区で行いました。北区の地域がどのような状況になっているかを知る機会にもなり、また地域の活性化を行政と一緒に考える場にもなりました。政策要望を自治体との懇談の場をつくってネットワークを作りながら活力ある町・会社作りが必要になっています。中小企業憲章については行政・金融機関ともによく知っています。そうした懇談の場などで憲章をどう活用していくか話し合うのも今後重要になってくると思います。

――今年は厳しい船出が予想されます。

瓜田氏 : 同友会の景況調査では昨年は回復基調ではありましたが、昨年10月―12月期については前期よりダウンするという予測です。
 アメリカも巨額の投資をして経済を浮上させてきましたが、今年は需要の先食いが終わります。日本でもエコポイントの反動が来るのは間違いないようです。
 それがどのように現れてくるかを注目しています。政策での景気刺激策はもう限界になっています。金融政策だけでも経済は立ち直らない。下手をすると二番底になるといったことも想定しておかなければなりません。
 マクロ経済的に、状況は良くならない。したがって自分から仕掛けを作っていくといった考え方でいかないと難しいと思います。地域での仕事づくりや産業づくりが重要だと思います。それも第二創業期くらいの位置づけで。
 デフレ経済の中では同じ努力をしても売り上げは下がっていく。同じ努力ではじり貧になっていくので、新しい事業、本業を膨らませることも含めて考えていく、地域の中でいろいろな事業体との連携をし、仕掛けていく。そのための人材を育てることも大事です。これからは、事業家としての視点を磨いていくことが必要です。

千葉 : 改めて、日本経済が量的な成長から質的な成熟への転換期になっていることを実感しています。弊社も同様でありまして、いかに質を高めていくかが課題になっています。現在、創業時の精神に立ち返る作業をしているところです。激変の中でも変わっていく部分、守っていく部分を明確にしていくことを行っています。経営理念の勉強のやり直しをしています。

――中小企業憲章をどのように活用していけばよいのかお聞かせください。

瓜田氏 : まず、憲章があるということを知ってもらうということです。(自分の)社員に知ってもらうことから始めてもよいと思います。国として宣言したわけですから、国、地域と自治体と様々なことができる手掛かりとして、政策要望や行動ができると考えています。
 国家戦略として中小企業を位置づけるのが同友会の主張です。海外に売り込むのでも原子力発電所や新幹線のような巨大インフラ輸出だけでなく中小企業を売り込んで欲しい。ドイツではそのようなことが実際に行われています。成長戦略は大企業だけのものではないので、発想を変えればいろいろなことができるのではないのでしょうか。

千葉 : この10年間で中小企業は89万社も減っている。国民経済に果たしてきた中小企業の役割を再認識するべきだと思います。中小企業に光を当てた施策が必要です。2300億円程度しかない中小企業予算を1兆円規模に引き上げれば、財政面でもいろいろな施策ができます。労働者も潤う、中小企業経営者も頑張れる、内需拡大で、資金が還流するような施策を望みます。

――本日はありがとうございました。  

 

中小企業家同友会
 全国47都道府県の中小企業家41、200名が加盟する日本最大級の中小企業経営者の会。
①企業の自主的近代化・強靭な経営体質作り
②これからの経営者に要求される総合的な能力の獲得
③社会・経済・政治的な環境の改善
を大きな目的として活動しています。
関心のある方は、左記ホームページにアクセスしてください。
http://www.doyu.jp/

中小企業憲章(抜粋)
 中小企業は経済を牽引する力であり、社会の主役である。常に時代の先駆けとして積極果敢に挑戦を続け、多くの難局に遭っても、これを乗り越えてきた。(中略)政府が中核となり、国の総力を挙げて、中小企業の持つ個性や可能性を存分に伸ばし(中略)どんな問題も中小企業の立場で考えていく。(中略)もって安定的で活力ある経済と豊かな国民生活が実現されるよう、ここに中小企業憲章を定める。
http://www.chusho.meti.go.jp/kensho/2010/100618Kakugi.htm