• 【東京・埼玉で税理士事務所をお探しの方へ。第一経理は中小企業の皆様に、身近でかけがえのないコンサルタントとして60年超の実績があります。】

経営のヒント

てんがん鏡Special

事業承継は進んでいるか?! データから年代・業種別に現状を読み解く

 

 社長の平均年齢は年々上昇し過去最高の59歳、うち70歳以上の構成比も全体の2割を超えるとのシンクタンクのデータもあり、経営者の高齢化問題が深刻さを増してきています。今回の特集では、3年前に取り上げた事業承継のテーマを、データや事例からさらに掘り下げたいと考えます。

 

 

てんがんライン 

P2表

 

 

 依然60代以上の経営者の過半数が後継者未定

 第一経理の顧問先について、各企業の代表者の年齢を年代別に集計させていただいた。
 3年前の状況と比較すると大きな変動は見られなかったが、事業承継が近い将来に必要となってくるであろう60歳以降の比率では、3年前が44%に対し現状では42%と若干の若返りが見られた。また、その中で後継者が決まっているか否かという視点では、3年前との比較で同等の比率となり、現状においても半数以上の企業について後継者が決まっていないという結果となった。
 さらに、代表者が60歳以降の企業を業種別でみたところ、後継者が決まっていない企業は、飲食業と卸売・小売業が70%超という状況に対し、医療・福祉と不動産業については半数以下にとどまっている。企業ごとの規模の大小はあるが、業種による事業の継続性は後継者の有無にも表れているようだ。

 

  実際の事業承継から見えてきた課題

 今回のテーマである「事業承継」は、3年前にも特集で取り上げている。この3年間で承継が行われた企業についての経過を追ってみたい。
 3年前は弊社の顧問先の内234件について、事業承継の必要性が認められ、その後、現在まで実際に承継が行われたのは37件であった。事業承継をした顧問先の代表者の平均年齢は、69歳から49歳へと若返りを遂げている。業種別での分析は以下のグラフとともに見ていただきたい。

p2-図2 業種別ではやはり建設業が一番多く、16件を数える。次いで卸売・小売業と製造業が続く。この37件のうち数件の現社長に、事業承継の経緯と、引継ぎした際の課題点について尋ねた。
 まず、先代の急死や病気により、急な代表者交代があった企業では、十分な業務の引継ぎが無く、一人で社長としての業務を把握することに苦労したという声が聞かれた。
 また、早くから後継者を決め計画的に事業承継をしたものの、株式の移動に期間を要することが課題となった企業もあった。前社長が会社を離れる場合には、後継者がスムーズに会社運営を行えるよう、早期に経営権・株式の所有権の両方を移すことが望ましい。
 特に建設業を主として、各種許可をもって仕事を受注している業種などは、資格や経験年数など一定条件が必要である。承継される側が、条件を満たさない場合は、許可が引き継げず、仕事ができなくなったり、新規に取得するための費用や手間がかかる場合もある。いずれの場合も、数年単位での準備期間を設け、戦略を練って事業を引き継いでいく必要性があることを示している。

 

建設業許可を受けている業者の事業承継の留意点

 建設業の各職では500万円以上の工事を請負う場合、建設業許可が必要となる。
 建設業許可申請では、経営管理責任者が必要になり、取締役として5年間(登記簿謄本で確認)の在職期間が必要となる。
 専任技術者は一定の資格(許可業種により資格が異なる)があるか、または実務経験10年(18歳以上から10年)が必要となる。埼玉県では電気工事業の場合電気工事士の資格が必要となる。
 事業承継においては、承継を受ける側がこれらの要件を満たしているのかどうかを事前に確認しておくことが特に重要となる。

 

中小企業白書等からの情報

 中小企業庁や各シンクタンクから発表されている事業承継に関するトピックスを紹介します。
 それらによると、事業承継が進まない理由として、大きくは「事業の将来性」や「後継者難」とされています。

  【高齢化によるリスク】
 
経営者の高齢化は、業績悪化、廃業に直結する課題であるとし、金融機関は後継者の有無も取引判断の重要項目としています。

 【準備期間】
 後継者の育成には「3年以上必要」と考えている経営者が8割以上だが、70代で5割の経営者が事業承継の準備が出来ていないとのこと。引継ぎ期間が短いことでの承継後の業績にも影響が表れているとのこと。
 これらのことから、「事業承継を円滑に進めるためには、まず、後継者を確保する必要がある」と結んでいます。

 

事例紹介

 
p2-1 子への事業承継

 運送業を営むZ社。社長の年齢は70歳を超えて、身体は万全ではない。多くの従業員・ドライバーを抱えていたため、会社を誰に引き継ぐかということは早いうちからの検討事項であった。
 社長は当初、社内に長くいた従業員や、同業他社の知り合いなど、何人か候補を絞っていたが、全員に断られてしまう。
 事業承継に悩む社長に、従業員や関係者から「娘さんに引継ぐのはどうか」と提案があった。当時から社員として在籍していて、周りからの信頼も厚かったが、社長は経営を任せるという意思は全くなかった。それでも「娘さんが引継ぐのなら全力でバックアップする」という周囲の後押しに心を決めた。
 早い段階で後継者を決めることが出来たため、計画的に事業承継を進めることが出来ている。数年前に役員に就任し、株の異動も始めている。
 娘さん自身も、始めは暗中模索であったが、経営に関する業務に参加したり、営業や挨拶周りの際に同行する機会が増えていくにつれて、徐々に意識が芽生え始めた。社内外からの信頼も今まで以上に増している。
 まだ代表には就任していないが、今後更に体制を整えたうえで完全に会社を引継ぐ予定である。
 

p2-2経営危機に立ち向かう

 Y社は精密加工部品の製造を行っている。
 現社長は30代であった3年前に父親である現会長から会社を引き継いだ。現在は、社長になる前から挑戦していた新たな受注分野も順調だ。
 ただ、Y社も順風満帆な中で事業を引き継げたわけではなかった。
 それは、主要な受注先からの生産能力の維持要請にもかかわらず、計画していた売上が実現されなかったことに加え、2008年のリーマンショックによる景気の減退も重なった。結果として、「売上減少・固定費増大」となり、資金繰りに窮したのだ。
 資金繰りや損益状況などを総合的に判断し、金融機関へ返済のリスケジュールに踏み切ることとなった。
 それに伴い、第一に、会社の損益状況の「見える化」を行なった。そこで把握した状況をもとに、会社を「見込める売上にカラダ(経費)を合わせる」という方針で経営改善計画をまとめ、銀行への対応も行った。数値面は取引先や受注内容に合わせカテゴリー別に利益計画を作った。その後も予実管理を行い、ズレの理由を検討し、また、見積もり精度も高めていった。 
 第二に主力の受注先の売上構成比を下げるべく、新たな受注分野での売上獲得のために、トライアンドエラーを繰り返した。
 数年、耐えることとなったが、景気の回復や新たな受注分野も獲得できたことから、現在では正常の銀行取引に戻ることが出来た。
 それを機に社長の交代が行われた。
 現会長は、振り返ると「当時は引き継ぐことすら考えられる状況ではなかったが、ほぼすべての経営改善を主導的に行ってきた現社長を見て安心して引き継ぐことが出来た」とのこと。
 一方、「リスケがきっかけだが、自社の現状や課題をひたすら考えてきたことが、社長を引き継ぐ自信につながった」と現社長。
 株式も承継でき、次の10年に向け、再加速を目指している。
                                                                                               

p2-3息子の急死をきっかけに

 建設業のU社。大手ゼネコンの2次下請けとして、一社独占で長年仕事を受注していた。当時の社長(現会長)の頭の中は「日に50人工月25日働いて月2500万稼いだら年商3億になる、そうすれば必ず儲かりお金が残るはず」だった。
 しかし、バブル崩壊後、取引先の建設業界の人工単価は下がる一方、職長クラスの日給月給は上がり、現場では利益はおろか、逆ザヤも発生することもしばしばだった。運転資金としての銀行借入残高は増え、信販会社からの融資勧誘FAXが、頻繁に届くまでになっていた。
 そして5年前、売上高を追い求めた結果、ついに、1000万以上の損失を出してしまう。翌期、独立していた息子が会社に戻り、仕事の受注や現場を管理するようになった。特に販管費のリース内容を見直し一本化することで、大幅に経費が削減され、資金繰りが改善された。
 父親から息子へ社長がバトンタッチがされる矢先に、その息子が急死してしまう。
 会長は失意した。正直いうと、この間、父親と息子は現場の段取りから営業の仕方まで「ここが違う、あそこが違う」と張り合うことが多かった。自分のやり方を伝えたくても息子は、もういない。そんな中、息子と親しくしていた若手の職人が、会長に対して「亡くなった息子さんの代わりに自分が社長を引き継ぎたい」と名乗り出た。会長はその職人に60歳で社長を譲ることを決めた。心配していた銀行借入の名義変更も、長年の信用と、新社長の経営姿勢、今後の事業展開の説明を評価し、無事に済ませることができた。
 社長になって3年目。5年間でV字回復とまでは行かないが、毎年利益を出し、資金繰りを重視している。取引先を増やし利幅のよい現場を取ろう、実績を積んで、規模を獲得し、いずれ1次下請けになりたいと画策している。会長も、いまや気負いは無い。現場で先頭に立ち、自分の良い仕事ぶりを教え、職人教育に専念している。

 

p2-4従業員(女性)への承継

 もともと関西を拠点に事業を行っていたが、東京への進出を契機に分社をし、事業を始めた。関西時代から含めると35年の年数になる事、高齢であること等で70歳を機に引退を決意した。引退に当たって後継者に選んだのは、会社で最も勤続年数が長く、他社員にも信頼の厚い女性社員だった。
 しかし、社員として十分に実績はあるが、経営者として特別の教育をして来た訳ではなかった事や、他社員からの信頼があるとはいえ、女性への承継と言う事で、はたして社員がついて行ってくれるか心配があった。
 事実、継承後の新社長は、特に人間関係に苦労したと話す。社員の時代にどんなに信頼があっても、今まで同じ立場だった仕事仲間が、急に雇主と従業員と言う立場になる事で、モノの考え方や見方がすべて変わってしまった事への戸惑い。リーダーシップを取らなければいけない焦りからくる威圧的態度でのギクシャク感。前社長との比較・・・。
 事業承継後3年が経った今、振り返ると様々な事があったが、会社の業績も安定してきた。それに伴い経営への自信も加わり、現在では社員に対し、自然体で振る舞えるようになった。会社の雰囲気も良くなり、社員と一緒に中長期ビジョンを語ることができるようになっている。

 

まとめ

 
 下段の図にあるように、事業承継はヒト、モノ、カネ、知的資産(経営資源)の中にある事業価値源泉を次世代へ承継することです。また、一部ではあるものの個人財産に対する相続対策も事業承継の可否に大きく影響を与えます。
 親族内承継の場合では、「経営者としての資質・能力不足」や「相続税・贈与税の負担」を挙げられており、親族外の場合では、「借入金・個人保証の引継ぎ」、「株や事業用資産の買取り資金」が問題として挙げられています。

 相続が争続となるリスクも含め、事業承継を進めるには、課題や問題点を整理し、すぐに解決できる内容ではないが、方針や計画を立てることが第一歩であると考えます。

 p2-図3