2019.09.05 お知らせ 相続法の改正が施行されました!

 昨年7月6日に民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律が成立し、約40年ぶりに相続に関する法律(相続法)の大幅な改正が行われました。

 そして、本年1月13日に自筆証書遺言の要式緩和が先行して施行され、いよいよ本年7月1日に改正法の大部分が施行されました。(改正法の目玉である「配偶者居住権及び配偶者短期居住権」については、来年4月1日に、相続法の改正にあわせて創設された自筆証書遺言の法務局での保管制度については来年7月10日に施行されますのでご注意ください。)

 今回の改正法の概要としては、①配偶者の居住権を保護するための方策、②遺産分割に関する見直し、③遺言制度の見直し、④遺留分制度の見直し、⑤相続の効力等の見直し、⑥相続人以外の者の貢献を考慮するための方策が挙げられています。

 その中でも今回施行された部分で注目すべき改正についてご紹介いたします。

(1)自宅の生前贈与等の持ち戻し免除

 税法では、婚姻期間が20年以上の夫婦間で、贈与税の特例を利用して自宅の建物又はその敷地を生前贈与した場合、相続財産に戻して計算しなくてよいとされています。民法でもこれと同様に、婚姻期間が20年以上の夫婦間で、自宅の土地又はその敷地を贈与又は遺贈した場合、遺産分割協議の際に自宅を相続財産に戻して計算しなくてよいとされました。これにより配偶者の取得できる財産を増やすことができます。

(2)遺産分割前の預金の払い戻し

 銀行が被相続人の死亡を知ると預金を凍結して引き出せなくするので、遺産分割前に預金を払い戻すには相続人全員の同意が必要でしたが、一定限度額の範囲内(150万円)であれば、各相続人が単独で預金の払い戻しを受けることができるようになりました。さらに、家庭裁判所が認めれば全部の払い戻しを受けることもできます。

(3)遺産分割前に財産が処分された場合の遺産範囲の変更

 遺産分割前に、一部の相続人が凍結前の預金を無断で引き出すなど財産を処分してしまった場合に、財産を処分した相続人の同意がなくてもこれを遺産に含めて遺産分割協議ができるようになりました。これにより、財産を処分した相続人が得する事態を防げるようになりました。

(4)遺留分の算定方法の変更

 税法では、相続開始前3年以内に被相続人が贈与した財産のみを相続財産に戻して計算すればよいとされています。民法では、遺言によって財産を取得した相続人が、他の相続人から遺留分を請求された際には、被相続人が贈与した財産は無限に戻して計算しなければならなかったところ、相続開始前の10年間のみで10年以上前に被相続人から贈与された財産を戻して計算しなくてよいとされました。これにより遺言の内容が実現しやすくなりました。

(5)相続人以外の親族の金銭請求

 無償で被相続人の介護や看病に貢献した相続人以外の親族がいる場合、その親族は相続人に対して寄与分の金銭の支払いを請求できるようになりました。

 なお、この制度が利用できる被相続人の親族とは、六親等内の血族又は三親等内の姻族であり、相続人、相続の放棄者、相続人の欠格事由該当者及び被廃除者は除かれます。