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会社訪問
インタビュー株式会社長谷川農場
専務取締役 長谷川 大地 様
循環型農業と
複合的経営で農業の
未来を切り拓く
株式会社長谷川農場は、栃木県足利市で米やアスパラガスなどの農産物、畜産などを手掛ける農業法人。長谷川大地専務は三代目にあたります。大学卒業後、ホスピタリティ産業でキャリアを積み、 2013 年に就農されました。それまで培ってきた知識を交えながら、循環型農業と複合経営、そして自社のブランド牛「足利マール牛」を打ち出すなど、独自のプレゼンスを示しています。長谷川農場の目指す農業の未来とは? 長谷川専務にお話を伺いました。

祖父から続く農場で働く決意をするまで
長谷川農場は約70年前、祖父が牛20頭と、米、イチゴ栽培から始まりました。現在では牛700頭、米は約30ヘクタールにまで拡大しました。米は事務所を起点に半径5キロ圏内の130枚の水田を管理し、年間約145トンを収穫しています。畜産と農産物、この2つを柱にした農業法人です。
私が就農したのは2013年のこと。大学卒業後、5年間星野リゾートで働いたのちのことでした。実は、本格的に家業を継ぐという意識が当時はなく、社長である父のもとで数年働いてから、長谷川農場の牛肉を使って飲食業を起業しようかな、などと算段をしていました。
でも実際に働いてみると、これはなかなか大変な仕事だぞ、と認識を改めることに。一気に変化を起こしていくのは難しいと考え、まずは私自身が動いて実績を作っていこうと覚悟を決めました。そして2016年に法人化を果たし、労働環境の整備とともに、循環型農業、複合経営、ブランド牛など、少しずつ実績を積み上げてきました。
循環型農業と複合経営の実践
飼育する700頭の牛のフンは大量です。昔は、牛の頭数を増やすには限界があると言われ、それは大量のフンの処理コストのためでした。長谷川農場では牛のフンを堆肥化し、周辺の農家さんへお譲りし、農家さんからは牛のエサとなる稲わらを譲っていただくという循環を形成し、地域との連携を行っています。四季の中で地域資源が循環していくのです。そもそも足利は稲作農家が多く、畜産農家は少ない地域のため、祖父の代からこの循環型農業を実践してきました。
複合経営にも取り組んでいます。たとえば、米を作る水田は、米を収穫後に二条大麦の栽培をします。アスパラガスも年に複数回の収穫をするなどしています。また、マルチタスクも長谷川農場の特徴です。 1人のスタッフが複数の業務に当たることができるように人材育成をしています。スタッフは米だけ、アスパラガスだけを担当するのではなく、一人でいくつもの農産物を担当するのです。畜産業と並行して、年間を通じて複数の農作物を育てることで安定した経営状態、年間雇用を目指しています。

オリジナルブランド牛
足利マール牛を育てて
長谷川農場が手掛けるブランド牛「足利マール牛」は、和牛とホルスタインを掛け合わせた交雑種です。サシがたっぷり入ったお肉というよりは、赤身とサシのバランスがよく取れた美味しいお肉になるのです。ブランド名にあるマールとは、ワインを製造する際に出るブドウの絞りかすのこと。マールは、地元・足利市のワイナリー「ココ・ファーム・ワイナリー」さんから譲っていただいたものです。牛のエサとなる稲わらに、発酵したマールを混ぜて牛に与えると、食欲が落ちる夏でもしっかり食べてくれます。
ここで飼育している牛がすべて「足利マール牛」になるのではありません。3割ほどに留め、ブランドを守り、高める努力をしています。足利マール牛をレストランなど飲食店への直販と並行して、長谷川農場オリジナルの足利マール牛レトルトカレー、ハンバーグ、ローストビーフなどを自社オンラインサイト「マールキッチン」で販売していますので、ぜひ一度のぞいてみてください。
現状維持を打破し
強い組織へと変わっていくために
近年、食にまつわる問題が社会問題として認識されるようになり、改めて自分たちの在り方を考えてみると、これまでは現状維持を目標にしていたことに気づきました。現状維持から脱却し、成長するためのチャレンジをしていかなければいけないと強く思うようになりました。そのためにはスタッフの意識改革が必要です。「毎年年初に、ミッション(果たすべき使命)、ビジョン(目指すべき理想の姿)、バリュー(具体的な行動指針)をスタッフ全員と共有し、どういう農業者になりたいか、目標設定をしてもらいます。」また「一人一作」として新たな作物にもチャレンジします。イチゴ、にんにく、スイカ、とうがらしなど、自分が手掛けたいものを決め、一年間責任を持って作るのです。すぐに採算ベースに乗るわけではありませんが、思い切って任せます。うまくいけばボーナスも出しますし、なにより「仕事を自分ゴト」として受けとめることが大切。これからもチャレンジを続けていきます。

次世代の育成で農業を盛り立てていく
私自身の中長期的ミッションとしては、規模拡大と人材育成の両立を掲げています。家族経営の農業は限界がありますし、農業をやってみたいという若い人を積極的に雇用し、企業として次世代を育てていきたいですね。



https://hasegawa-noujou.jp/marckitchen/
株式会社長谷川農場
栃木県足利市で米やアスパラガスなどの農産物、畜産などを手掛ける農業法人
栃木県足利市羽刈町1319 –1
https://hasegawa-noujou.jp/