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会社訪問
インタビューNPO法人 在宅介護福祉センター浜田山
理事長 岡安 容子 様
デイサービスという
仕事を天職として生きる
NPO法人 在宅介護福祉センター浜田山が展開する地域密着型デイサービス「魔法のつえ」は、杉並区浜田山の閑静な住宅街にあります。理事長の岡安容子様は、介護事業を天職と語り、自ら中心となって現場を切り盛りしてきました。高齢者の「生きる楽しみ」を支える岡安様の哲学には、人生の最終章を豊かにするためのヒントが詰まっています。岡安様の目指すデイサービスのかたち、そして高齢者を取り巻く現状について話を伺いました。
明るい歌声が響く
デイサービス「魔法のつえ」
地域密着型通所介護とは、利用定員18人以下の小規模なデイサービスを指します。「魔法のつえ」の定員は10名。アットホームな雰囲気の中で、音楽療法などのアクティビティを取り入れていること、手作りの食事を提供していることが特徴のデイサービスです。
毎日午前中は、プロのピアニストをお招きし、生演奏に合わせて皆で歌います。かつて歌った曲に触れることで、その当時の情景やエピソードが自然に思い起こされ、思考が広がり、脳の活性化にもつながる音楽療法というものです。音楽は記憶を呼び覚ますだけでなく、コミュニケーションも促しますし、喉の筋肉を使うため嚥下障害の予防にも効果があります。現在、レパートリーは1,000曲にもなりました。一人ひとりの「歌いたい」というリクエストに応え続けてきた積み重ねです。

家族譲りの哲学
人のために働くという気質
私は北海道出身。曾祖父が屯田兵として入植し、父は医師でした。戦後の社会的インフラが整備されていない時代、私が子どもの頃は夜、医師がいない近隣の町から、急患がリアカーに乗せられてやってくることが多々ありました。父は求めに応じ、その度に母はペチカに火を起こし、部屋を暖かくして患者さんを迎える準備をしていました。男も女も関係なく、人のために働くことをいとわない。それが私たち北海道人の気質なんだと思います。
また、家族や親せきに音楽を学んだ人が多かったので、生活の中に自然と良質な音楽がありました。そういう環境で育ったのも、私が音楽療法を積極的に取り入れる理由のひとつですね。
「食べることは生きること」
手作りの食事は人生の喜び
音楽と並んで、こだわっているのが食事です。メニューはすべて施設内で調理された手作り。10人分の昼食の調理をスタッフと共に自ら行います。食べることは生きること。体は食べることでできていますし、最後に残る楽しみは「食事」なんです。年齢を重ねると、映画を観たり本を読んだりすることも難しくなります。そんな中で、日に数回必ず訪れる食事の時間は、一日の中でも最大の楽しみとなります。だからこそ「どうやったら喜んでもらえるか」を常に考え、利用者の声に耳を傾け、メニューを工夫することに情熱を注いでいるのです。
とんかつやミートローフなど、お肉が好きな方が多いです。戦後、そういう洋食がご馳走だった時代に生きてきた方々ですから、私たちが抱きがちな「高齢者=和食・粗食」というわけではないのです。それぞれの嗜好や人生の背景に寄り添うこと。そして利用者の「おいしい」という一言が、原動力になります。
支え手が減る時代にも
介護現場を守り続ける
いわゆる2025年問題として、団塊の世代がすべて75歳を迎えたことが話題となりました。2040年には団塊ジュニア世代が65歳以上となり、高齢者人口はピークに達します。介護人材の深刻な不足に加え、現役世代の減少によって、社会保障制度の持続可能性にも懸念が広がっています。
慢性的な人手不足の背景には、仕事の専門性や重要性に見合わない賃金水準や、社会的評価の低さがあります。この構造を見直さなければ、状況は変わりません。そうした中で、「魔法のつえ」では、外国出身者や障害のあるスタッフも自然に働いています。人手不足という現実的な課題に向き合いながら、「来るものを拒まない」という姿勢を大切にしてきました。そうした考え方は、たくましく生きた曾祖父から受け継いだものかもしれません。

介護業界という天職を見つけた思い
介護の仕事を始めたいと考えたのは、ちょうど50歳のとき。人生の転機を迎え、今後の生き方を見つめ直していた時期に始まった介護保険制度と、幼い頃から身近にあった「人のために働く」という思いが重なったのです。
介護保険が始まった翌年の2001年、事業をスタートしました。息子を中心に甥や姪がサポートしてくれ、申請書類や資料作成を手伝ってくれたのは心強かったですね。最初は自宅を事務所として開放し、訪問介護・居宅介護を中心に展開していました。その後、念願のデイサービスを開業いたしました。そのための場所を探し、たどり着いたのがここです。
長く通ってくださる利用者の中には、最長で11年に及ぶ方もいます。年ごとに少しずつ衰えていくのは避けられませんが、その方の人生のフィナーレ、ラストステージに輝いていただきたい。そのためのお手伝いができるこの仕事が天職だと思っています。
利益や効率が優先されがちな現代ですが、私は毎日、利用者やスタッフとの交流の中からエネルギーをもらっています。だからこそ、この現場を続けていきたい。この仕事に出会えてよかったと、心から感じています。